幕間2

第19話 Es

 私の意識は突然黒い世界で覚醒した。


 一面の漆黒が私を包み込んでいる。

 身体が動くのか試してみた。 

 動く。

 少なくとも腕はある。

 足もあった。


 そして、思考と自我の存在を確認した。

 では、たった今思考している『私』はなんだ。

 解らない。

『私』は誰だ。

 解らない。

 けれど。この胸にあるもの。


 それは、羨望、絶望。深い憎しみ。

 そして――小さな、けれど強い光を放つモノ。


 恐らく私を構築したそれらがうねり私の中を駆け巡る。

 何故私の中にそのようなものがあるのかは解らない。

 けれど、今の私に出来るのはこの黒い感情のうねりに身を任せる事だけだった。

 ならば、今は従おう。憧れを求め、そして刈り取る為に。


 黒い感情が更に肥大化し暴れ出す。

 私の中で唯一光を放っていた小さな虹色の欠片は黒い濁流に飲まれて消えた。

 そうして私は黒い世界の中で、黒く塗りつぶされていった。

 

 黒く黒く。

 

 どこまでも黒く。

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