第14話 other side

 プラント内は突然のダゴン級ハイドラマグナ出現に慌てふためいていた。


「どうしてこんな至近距離に出現するまでレーダーに引っかからなかった! 監視員は居眠りでもしていたのか!」


「それが、レーダー反応無しで突然出現したようです! 恐らくこの近くで一気に群れて変化したのかと思われます……!」


「……くそ……! 下らない知恵を付けやがって……! だ!」


「頭部形状から恐らくは新型……ヘリコプリオンかと思われます!」


「……よりによって……! どうしてこんな時に。まさか『バロット』搬出のタイミングを狙ってやがったのか?」


 ヒゲ面の男、警護責任者である田村は壁を殴りつけながらそう吐き出した。


「『MW-09  Tyrfing2セカンド』の準備は!?」


「出来ています! ただ、この距離では重要区画が圏内に入り、育成中のG2や機器のほとんどを放棄しなくては……」


「……解った。止むをえん。搬出中の『バロット』をこっちに回せ。先方には適当に話をつけるしかあるまい。『バロット』に『MW-07 Tyrfingファースト』を併せて準備しろ。三セットだ。インプリンティングは現地で直接俺が行う。とにかく急げ!」


「畏まりました!」


「ついてねえ。こんな非常時にこそあの黒いのカラスでも出てくれりゃあな」


 部下を見送った田村は銀色をした宇宙服のような防護服を着込み廊下の奥に消えていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る