第37話 『夜中』 その19

「まあ、聞いておきなさい。君んとこの政府は、世界征服を企んでいるのだ!」


「はあ?」


 ぼくは、やっと声を出すことが出来たのです。


「だからだな、君の国の今の政府は、この地球の征服を計画しているのだ。」


「ブビィよよよよよわ~~~~~~~ん。けけけ!」


「ついに、こやつ気がふれたか。」


 途中から現れたお嬢が、失礼にも、そう言いました。


「ば~か。あのね、やたら、たっかいお金使って、あの国から防具とかを買ってるけど、うっかり使ったら大変なことになるのは目に見えてるんだ。周囲はみんな核兵器を持ってる。だから、あれは、持ってることだけに意義があるんだ。それ以上の使い道は、ほぼないよ。世界制服に使える訳がない。」


「だから、今、我らの一部勢力が、隠れて、君んとこの政府に、協力をしているのだ。それなら、事態が違ってくると考えるべきだ。ただし、地球人類は、けっして甘く見てはならない、ということは、分かっている。事は、慎重に進められているのだ。今回の『面接会』は、小さな隠れ蓑に過ぎないのだ。しかし、やらせたくはない。それなら、納得するのかな?」


「ちょっと待って。じゃあ、その共謀の内容を教えてくださいよ。それじゃあ、まるで『たかちゃんちの豆腐』、を掴むような話だから。」


「なんだ、そりゃあ?」


 お嬢が聞いてきた。


「近所の豆腐屋さんだ。非常に美味いのだが、腰は弱い。」 


「たしかに、あそこのは、美味かったな。・・・ふん。よかろう。しかし、それならば、一緒に来たまえ。どうせ、君にはあの職場では、もはや、将来はない。」


「あたしも、ここからは離れる。ほら、あいつがドアをノックしているぞ。きっと、政府庁舎の警備官を10人ばかり引き連れてることだろう。強制的にドアを開けるように要求しているが、支配人がのらりくらりとかわしている。しかし、あまり長くは持たないぞ。支配人は、我々の組織ではないが、比較的近い考えのグループだ。ただし、争い事は嫌う。」


「なんで、わかるの。」


「見えてるからだ。あたしの能力は、もはや、大幅に増大した。が、このホテルに迷惑はかけたくない。」


「と、いうわけだ。議論の余地はなかろう。あの、やなやつに拘束されるか、一緒に来るか?」


「あいつにだけは、拘束されたくはないです。」


「決まった。」


 ぼくは、それで、その室内から消えたのです。



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