第36話 『夜中』 その18

 ぼくは、あまり人前で爆発する性格ではないのですが、今回は、いささか爆発寸前ではありました。


 しかし、自室に帰ってじっと考えてみれば、ぼくの立場から言えば、出過ぎた真似をしたのかもしれない、とは、多少は考えたのです。


 まあ、親分が言う通りで、ぼくには『面接会』そのものをどうするなんていう権限は、そもそもありません。


 しかし、それでも、これは、見た目より、非常に危ないことをやろうとしているのではないかという、勘のようなものが、うずうずと渦巻いていたのも事実なのです。


 今夜は寝られそうにもないし、まあ、しばらくは休暇ということになったので、いまさら、気にする必要もないでしょう。


 しかし、深夜の3時半も過ぎ、もうすぐ朝が来るぞ~、という時間になって、薄暗い部屋の中に、再び、あの怪しい影が現れたのです。


「おじゃまするぞ。ふん、まあやはり、まだ起きていたか。あいかあらず、君は小心者だな。」


「なんでしょうか。まだ用があるの?」


 影は、当然、あの怪人さんです。


「まあ、そう言うな、もと君の父親であるぞ。」


 ぼくは、もっと感動すべきだったのです。


 だって、ここに来ている、大きな目的は、父の消息を探すことだったのですから。


 その結果が、目の前にあるわけです。


 しかし、得体のしれない宇宙人から、「元、父親だ。」なんて告白されて、いったい、どう感動したらよいのでしょうか?


「困惑するのは、まあ、わかる。しかし、事実は直視しなければならぬものだ。それに、解決策はある。君が、我々の仲間になれば、それで済むことだ。」


「冗談じゃない! よく言うよ。心配ばっか、かけておいて。」


 ぼくは、いささか大きな声で、相手をしかりつけたのであります。


「ふん。我々には、感情というものがあまりない。が、しかし、理解はする。いいかい、君を仲間に改造するのは簡単だが、今夜はその気はない。少し、状況を説明しておきたいだけだ。我々の指導者の意向でもある。」


「むむむむ。」


 さすがに、涙がじゅわっと出て来てしまったのです。


 ぼくは、悔しさも重なってしまったおかげで、ちょっと言葉がうまく出ませんでした。


 そこに、お嬢の姿が、さらに、浮かび上がってきたのです。



  ************   ************

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る