第34話 『夜中』 その16
ぼくが電話を終了するのと、ほぼ同時に、親分も話を済ませてしまいました。
「いかがであったかな?」
その怪人は言いました。
「あなたがたは、あまり意思の疎通が良くなさそうだ。だから、代わりに言ってあげているのだ。しかし、私はそういうところを、大変評価もしているのだ。その意思の疎通の悪さこそが、地球人の最大の利点であり、強みなのだ。おたがいが相手の意志を読み合い、読み切れないから、話が、かみ合わない。だから、また話し合おうとする。我々からすれば、一人の情報から、すべてを読み取ることが困難なので、ある。違うかな?」
「いや、合ってますよ。」
これは、ぼくです。
「ふん。間抜けは、上に従えばいいだけだ。」
これは、親分です。
「この男、処分していいか? 統括?」
お嬢が言いました。
「しょ、しょぶん?」
「あまりに無礼であろう。首ねっこを引っこ抜くなど、今や、たやすいことだ。」
お嬢は、テーブルにあった、ふっとい卓上蛍光灯スタンドをつまみ上げ、あたかもキノコのように、真ん中から真っぷたつに引き裂いて見せた。
「おわ~~す、すごい!・・・いやいや、それは良くない。無礼でも、同じチームだからね。」
「ふむ。よいか貴様、統括のお情けだ。わたしは、当面、こやつに従う事と決めた。無礼が過ぎると、こうなるぞ。心せよ。」
親分の握りしめた手が、少し震えていた。
王子が口を開けたまま、絶句している。
「まあまあ、そのくらいでいいでしょう? で、どうだったですか? 秘密ですかな?」
御飯小路の兄が、さらに尋ねてきた。
「30分、待ってくれるように言われたんです。」
ぼくが言いました。
「こっちもだ。」
親分が突っぱねるように言いました。
「なるほどお! 人間にしちゃあ、よく協調できてますな。」
怪人が面白そうに、冷やかしを言ったのです。
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それから、30分後。
ぼくと親分の携帯電話は、ほぼ同時に鳴ったのでした。
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