第29話 『夜中』 その11

 深夜になりました。


 この島にも、最近ラジオとテレビの中継が行われるようになりました。


 幽霊さんが、一体テレビを見るものなのか、ぼくは随分疑問には思っておりました。


 しかし、現状を見れば、十分あり得るという気がしてきました。


 『幽霊』とは言え、どうやら普通考えている『幽霊』とは、違っているようなのです。


 ニュース専門チャンネルをつけてはいましたが、みなずっと無言のままです。


 1時になり、やがて、2時になりましたが、誰も現れません。


 気の短い親分が、何か言い出しそうな雰囲気になった、その時です。


 突然テレビが消えました。


 室内の明かりも、全て落ちました。


「おわ、なんだ?」


ぼくが、思わず言いました。


「来ました!」


 御飯小路の兄が囁いたのです。


 気がつけば、目の前に、紫色のマントに身を包んだ、身長2メートルはありそうな、怪しいおじさんが、立っています。


 いわゆる、吸血鬼スタイルです。


 そうして、その傍らに、同じマントを纏った人物がおりました。


『お嬢?!』


 番長がびっくりしたように、声を上げたのです。


 それは、正に、お嬢でした。

 




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