第25話 『夜中』その7

 ぼくたちは、再びぼくの部屋に集合しました。


 いまに、お嬢から電話がかかるか、と思い続けましたが、ついにそれは起こりませんでした。


 いや~な雰囲気です。


 親分が言い出すのは、判っていました。


「あなたの指導力不足だ。」


 ずばっときました。


「みんな、まとめて食事に行ければ、このようなことにはならなかった。なぜ、ホテルで食事にしなかったのか。」


「そう言われてしまえば、そうなんですがねぇ・・・。」


 番長が猛然と反論しました。


「統括は、皆であそこに行こうと思っていたし、そう誘ったじゃない。拒否したのはあんたでしょ。」


「まさか、この地で、夜、外に出ようなんて考えない。不用意だ。お嬢にもそう言うべきだったんだ。」


「統括は、あの店で、情報収集をしていた。あんた、ぼけっと資料見てたくらいでしょう?」


「なに! 我々の仕事は、情報収集なんかではない。」


「ままま、そこまで。言い分は、どっちも分かるよ。でもね、今、喧嘩しても仕方ない。ぼくは、この後すぐ、市に報告する。」


「報告って、夜中ですよ。」


 親分は、ぼくに盾つくことが仕事であるのです。


「いや、参事の携帯に電話を入れる。」


「それは、まだ早い。」


「いや、早くない。こうした事は、報告するべきだよ。そうして、面接会は延期にしてもらう。」


「だめです。はっきりしてからだ。延期なんて、とんでもない。あなた一人の判断で決める事ではない。」


「じゃ、ここで、誰が決めるの?」


「いや。それは、ちゃんとぼくらの意見を入れてほしい。」


「わかった、じゃあ、報告することに同意するものは?」


 ぼくは、王子は同意する、と思ったのですが。


 彼は、親分に付きました。


「2対2。では、ぼくが決めます。」


 そこに、内線電話が鳴りました。


 番長が電話を取りました。


「統括・・・フロントから。」


「ああ、・・・」


 ぼくは、受話器を受け取りました。


『ああ、統括さんですか? お客様です。『あたりまえ食堂』のかたですが。』


「すぐ降ります。番長、来て。」


 本来ならば、番長と親分は同格なのですが、ここで親分を連れて行く気にはならないです。






  ************   ************



 























 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る