第23話 『夜中』その5
ぼくと番長はホテルに急ぎました。
フロントで確認しましたが、お嬢はまだ帰って来ていません。
親分と王子を呼び出し、ぼくの部屋でミーティングとなったのです。
「子どもじゃあるまいし、まだ10時だから、様子を見た方が良い。騒いでなにもなかったら困るのは、あなただろう。」
親分は言いました。
王子は、そこに同調。
「いやいや、場所が場所だし、聞いた話の内容からも、探した方がよい。」
と、ぼくと番長が主張しました。
「まあ、決定権はあなたにあるからね。確かに電話に出ない方も良くない。」
親分も、いくらか歩み寄りました。
もちろん、電話はかけ続けています。
しかし、呼び出しはするけれど、まったく反応はありませんでした。
「しかし、探すと言っても、どうやってですか?」
王子が尋ねてきました。
「ああ、それはね、緊急時にはフロントさんに申し出るように言われてる。ここの警察権は、地元に移譲されている。ぼくらには治安機関には接触できないんだ。というか、そもそもそうしたものがあるかどうかも明らかにされていない。お偉方は知ってるのかもしれないが。」
「やっぱり、異常だよね。」
番長が言いました。
「まあね。この際、フロントに言ってみよう。探すだけなら、そう大問題でも無かろう。居場所と無事が確認できれば、それでいいんだから。」
「ご自由に。」
親分も同意しました。
しかし、事はそう簡単ではなかったのです。
*** *** ***
「わかりました、あなたが、その資格をお持ちであることは確認できました。では、そのかたの所在を調べます。」
フロントの、まだ若いだろう感じの男性が言いました。
「あの、あなたは、人間ですか?」
ぼくが尋ねました。
「いいえ、違います。ロボットです。」
またまた、あっさりと、言われてしまいました。
「この体は、作り物ですよ。」
「ロボットさんがいると言う話は、元々、聞いては来ていたが、『読書喫茶』の方と言い、・・・よく出来てますねぇ。」
「はい。いささか、少し、動きに不自然なところはありますが。しかし、フロントの動きは、ある程度限られています。違和感はないでしょう?」
「まったくね。」
「今、すでに調べております。少々お待ち下さい。」
「最初から、ここに、そう聞けば、よかったのにねぇ・・・。」
番長が、ちょっとぼくを睨みながら言いました。
まあ、親分が言うように、子供じゃあるまいし、とも、思いましたが。
でも、あの御飯小路兄妹は、本当に人間なのだろうか・・・?
彼女の言葉を思い出しながら、なんだか、あやしい、という気がしてきました。
************ ************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます