第22話 『夜中』その4

 ぼくたちは、一旦ホテルに戻りました。


 お嬢が帰っているかフロントに尋ねましたが、出かけたままだと言います。


 時間は、いま、午後9時前です。


 まあ、聞くところによれば、スナックが一軒と、深夜まで開いてる読書喫茶が一軒、近所にあるとのこと。


 他の食堂もあるけれど、もう閉まっているはずというのです。


 お酒を飲まないお嬢が、スナックでとぐろを巻いてるなんてことは、地球最後の日までありえそうもありません。


 ならば、その読書喫茶店でしょうか。


 これならば、大いにありそうです。


 電話は相変わらず通じないので、ぼくと番長は、すぐそばだと言うその店に行って見ました。


 そのお店は、確かに営業していました。


 お客様もいるようです。


 レジにいた方は、ロボットさんだそうですが、こうおっしゃいました。


「ああ、その方、来ました。でも、1時間半ほど前に、出て行ったです。」


「ひとりでしたか?」


「いえ、どなたか、女性の方がいっしょ。入る時は、どっちもひとりでした。」


「むむむむむ・・・・あやしい・・・・そのひと、ご存知の人ですか?」


「いえ。まったく。ぜんぜん。始めて見た方です。」


「ふうん・・・・」



   ***   ***   ***



「いやあ、なんだか、ものすごく心配になってきた。誘拐されたんじゃないかなあ。」


「まっさかあ。いくらなんでも。誰かと仲良くなって、どっかで遊んでるんじゃない?」


 番長が言います。


「この街で? あの、お嬢が?」


「ううん。ありえないかあ。」


「うん。とりあえず、そのスナックに行って見ようか。」


 大通りには、しっかり街灯が奇麗に並んでいますが、一歩裏道に入ると、そこは暗闇が支配していました。


 しかも、教えてもらったお店は、電気も消え、人気もなく、ドアさえ閉まったままです。



     『スナック、優麗』 



「開いてないね。」


「うん。裏に回ってみよう。」


 ぼくたちは、お店の反対側に回って見ました。


 しかし、そこもただ真っ暗なだけで、まったく人影もありません。


「こりゃあ、ダメだね。」


「まだ、呼び出しはするけど、電話には出ないわ。」


「さて、どうするかなあ。一旦、帰ろう。この際みんなに報告しようよ。でも、その前に、例のお店に寄ってから。」


 ぼくらは、ふたたびあの食堂に向かったのです。


 しかし・・・・・・


「あらら、電気消えてる。」


 さきほどのスナックと、全く同じ状況でした。


 入口を叩いてみても、反応はありません。


 同じように裏口に回ってみましたが、成果なしに終わりました。


「こりゃあ、まいったな。やはり、帰って相談にしようか。もしかしたら、戻ってるかもしれない。」


「了解。」


 ぼくたちふたりは、ホテルに戻りました。




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