第20話 『御飯小路さん』その5

 「あ、そう。いえ。いま御飯中。おいしいよお~~! 親分も来ればいいものを。・・・あ、そう。で、お嬢は?・・・・あらま・・・・え? いいのかなあ・・・・。了解。・・・・・ふわ!・・・・まあ、いっとく。・・・じゅあね。」


 「なんですとな?」


 ぼくが番長に尋ねました。


 「親分は、ホテルに帰っていると。ホテル内のレストランで王子と海鮮丼を食べたらしいよ。ごく普通に、うまかったと。あんたたちも、遊んでないで勉強しろと。飲み過ぎると悪い頭がますますまずくなると言っとけと・・・王子も部屋に戻ってるそうですよ。そっちも酒なんか飲んでないで勉強しろ、とのこと。ぷんぷん!」


「そりゃあ、どうも、ありがとう。お嬢は?」


「そこよ。姿が見えないし、電話にも出ないと。こっちからにも応答しないの。」


「ふうん・・・・まあ、いつもの事ではあるがな。しかし、心配だなあ。お嬢は、電話には反応しないことも多いとはいえ。」


「まあね。でも、統括のGPSで居場所が確認できるんでしょう?」


「それが・・・・この島ダメなんだ。」


「は?」


「そこまで考えてなかったが、その機能は停止されてるようだな。」


「おやま。」


「ねえ、御飯小路さん、お嬢様、うちのお嬢の事、知らないですか?」


 御飯小路さんは、大幅にとぼけたのであります。


「さあああてね~~~~~?」


「あのね、ぼくが思うに、君たち、ここに来た人間全員の動向を探ってない?」


「まさか、でしょう。」


 御飯小路さんが、またまた、すっとぼけました。


「だって、さっき言ったじゃない。興味津々だと。あなたがたは、ぼくたちを監視しているようだし。そう考えた方がごく自然だなあ。」


「それは、勘ぐり過ぎというものであります。な?」


 な? と聞かれた妹のお嬢様のほうは、あまり反応しなかったのです。


 代わりに、こう言いました。


「ギブアンドテイクでしょう?」


「こらこら。うん・・・まあ、そうね。」


「しばらくは言わない積りだったんですがね、実は、いまこの島は、権力闘争のまっ最中なのです。」


「権力闘争?」


「ええ。『伯軍』と『侯軍』に別れてましてねぇ。ああ、でもこのあたりは、基本的に人間であるぼくらがお話するべき事じゃあないです。」


「『ハクグン』と『コウグン』? なんだそりゃ。」


「そこに、『穏健派』の『子爵軍』が割り込んでましてね。」


「きみたちは、どっち派?なの」


 ぼくは、尋ねました。


「人間や、元人間は、ばらばらにそれぞれの立場に散ってます。統一はありません。ぼくらは『穏健派』です。争いごとは嫌なのです。」


「ううん・・・・・ここにきても、権力争いかい?」


「まあ、個体が複数存在すれば、権力争いは必然的に生じますから。」


「なんか、幻滅だなあ。」


 そうなのです、ぼくは、この島の生き物(?)に、ある種の憧れを抱いていたのですから。


「今夜、ま夜中に、あなたのお部屋に、ご説明にお伺いするように手配しましょう。危害は一切加えませんからご安心を。あなたがたのお仲間のことも調べてみます。で、あす夜、またおいでください。」


「まあ、あすが済んだら、面接会当日ですよで。でもね、さっき言った通り、ぼくはなんとか止めるつもり。話を聞くほど、そんな気がするからね。」


「あの、今夜の解説を聞くまでは、市に追加報告するの待ってください。


「ふん・・・・・まあ・・・・考えましょう・・・」


 ちょっと、行き詰った雰囲気が漂ったのです。


「ああ、せっかくパンフ持ってきましたから・・・・」


 お嬢様が、大きな色とりどりの地図を広げました。


「出来立ての『ほやほや』ですよ。うちのお店が独自に作ったこの島の『観光・探検案内』です。もっとも、まだ解禁されてないですけど。公開されていない情報が満載ですよ。」





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