第17話 『御飯小路さん』その2

 青年が言います。


「おふたりのお立場は解っております。情報提供とお考え下さい。」


「はああ・・・・まあ。この際どうぞ。」


「いやあ、じゃあ、ちょっと。」


 彼は畳の上に上がってきました。


 お嬢様も、パンフレットを片手に同席しております。


「『御飯小路さん』って、あの『御飯小路さん』ですか?」


「そうです、『あの』御飯小路です。」


 『御飯小路家』は、この『不思議の島』に最も近い本土側の島である『大御宝島』の名家です。

  

 もともと、『大御宝島町』という町がありました。


 島ひとつで、一つの町になっていたのです。


 現在は、わが市に合併しているのですけれども。


 『御飯小路家』とその分家である『御漬物小路家』は、長年交代で、町長を務めて来ていたのです。


 まあ、島全体が親族のような感じだったのですけれど。


 この『不思議の島』が現れた後、すったもんだの末、日本に統合されてから、最初の2年間は、名目上『大御宝島町』の行政区域に入っておりました。


 あくまで、『形式的』に、ですけれど。


 なので、『御飯小路家』の当時のご主人は、この島の町長さんだったのです。


「ぼくは、当時町長だった『御飯小路 清輝』の孫にあたります。」


「ほう・・・興味深い。」


「遊び人ですよ。この人は。」


 お嬢様があえて、付け加えました。


「まあ、作家と言ってくださいよ。無名ですけど。」


「ご本とか、出されてるんですか?」


 番長が尋ねました。


「いや~~。売れなくてねぇ~~。ははは。データがたまる一方です。ははははは。」


「まあ、でも、これから売れる、という訳すよね。」


 ぼくがフォローしました。


「まあ、そうあればよいのですが。ぼくは、東京で大学出まして、しばらく広告代理店で働いていましたが、どうも、この企業というものに馴染めなくて、2年前に帰って来たのです。それ以来、この島の研究に、力を入れて来ました。」


「ほう・・・難しかったでしょ?」


「まあね。でも、じいさんのおかげと言うか、まあ、失礼ながら・・・市とか国とかの隙間をかいくぐって、こうやって上陸できてるわけですねえ。」


「なるほど。ますます、興味深い。」


「あなたのことは、存じてますよ。市の総務第2課の統括さんだ。お父様は、元大学の教授。考古学者。」


「ええ! なんで、そんなことを?」


 番長が、興味深そうに僕の顔を覗いております。


 そうした話は、まあ、したことないですからね。


「まあ、父親が、あなたのお父さんの、教え子だから。と、言いましょうか。」


「むむむ。聞いてないなあ。」


「そりゃあ、そうでしょう。しかし、あなたのお父様は、この島で行方不明になった・・・」


「え? どうしてまた、そんなことまで。それは、公表されていない・・・」


「ええ。学生にも、伝えらえなかったのですよね。でも、ぼくの父は、知っていました。なぜならば、あなたのお父上と同行していたから。」


「ええ~~!?」


 ぼくは、座ったまま、飛び上がりました。



  **********   **********









































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る