第16話 『御飯小路さん』その1

 ちょうど、頼んでいたお酒の追加がやって来ました。


 もちろん、番長が頼んだのです。


「ああ、いいところにきた。あの・・・ええと、何とお呼びしたらいいモノかな・・・」


「ああ、じゃあ、お嬢様とかで、いいです。」


「あ・・お嬢・・・さまですか。はいはい。あのお嬢様、ちょっとこの島のお話とか、聞ければなあと、思いまして。」


「ああ、はいはい、いいですよ、ちょっと待ってくださいね。パンフレット持ってきますから。」


 彼女は、一旦、引き上げたのです。


「まあ、統括も、どうぞ。」


 番長がお酒を勧めてくれました。


「ども。・・・」


 番長以外に、こうしてくれる人は、この世にありません。


 親分がいると、ぼくが注いであげないとだめなのです。


「何を聞こうかなあ・・・」


「ぶ! 考えてないの?」


「うん・・・実はそうなんだなあ。」


「まあ、私が聞いてみましょう。」


「はいはい。」


 とか、言っている間に、あの、お店のお嬢様が帰ってきました。


「あのう・・・実は、一緒にお話したいと言う方が来ていらっしゃいまして・・・いいですか?」


「はあ? それはまた、どなたですか?」


「どうも!」


 ふすまの向こうに、爽やかそうな青年が立っておりました。


 羽織・袴、姿です。


「失礼します。『御飯小路 進』と申します。」



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