第11話 『市役所』その7

 お日様のような、まん丸な球体。


 真っ青な顔いろ。


 つまり体のない人間の頭だけような感じもします。


 しかし、どうやら目らしきものが全部で10個、周囲を取り巻いています。


 そうして、その円周の半分以上はあると思われるのが、恐らくお口です。


 開けた時には、ものすごく鋭利な歯が、全面にのぞきます、


 それだけ。


 手も、足も見えません。


「なんだこれは?」


 親分が怪訝そうに言いました。


「わたくしが見た、彼らの姿ですわ。」


「はあ? 幻だろう?」


「まあ、そう、おっしゃるならば、そうですわ。肉眼では見えないですもの。」


「どのくらいの大きさなの?」


 ぼくが尋ねました。


 親分が、おまえはしゃべるなと、睨んでいます。


「そうですえわねえ。おそらく人間の頭ふたつ分くらいかなあ。」


「大きいな。」


「どうやって、歩くの?」


 番長が尋ねました。


「見た感じでは、浮かんで飛ぶ。かな。」


「幽霊だもんな。」


 王子が言いました。


「たしかに、幽霊番組でも、普通の人には見えないからな。なぜか、カメラには映るけど。」


「まあ、あれは、ほぼ脚色されてますから。見えなくて当たり前です。」


 お嬢が、軽く答えました。


「あんたが、本物を見てると、どう証明できるんだ?」


 親分が、つっかかりました。


「だって、お話してたでしょう。おかしな掲示板も見たでしょう?」


「自作自演かもしれない。」


「おほほほほ。係長さんが、なぜそのような無駄なことをするのでしょうか?」


 これには、親分は反論できなかったのです。


「乗り移ってるというのは、なに?」


 番長が、気になるところを尋ねました。


「まあ、これは微妙なのですわ。ただ、彼の姿は、わたくしには、やや、ぶれて見えていたのです。これは、なにかが憑依しているときに見られる現象です。物理現象かどうかはわからないけれど。そこに、ちらちらと、この同じ影が見えたので。そう申しました。」


「あの、この中に、憑依されてるのがいるのかな?」


 親分が、『僕の代わり』に確認しました。


「いえ、いません、わたくし以外には。」


「はあ?」


「自分の事はわからないのですもの。」


「はあ・・・・・・。」


「一体、どうする積りですか? あなたが責任者だから。」


 番長が僕を叱責するように、確認しました。


 なぜ、こういう時にだけ、ぼくに確認するの?


「ふん。当面今日の予定は進めるしかないな。お嬢は、この後来る、国とか、ス


ローワークや企業の方をよく確認してください。で、問題なかったら、そのまま、


乗り移られてるやつが一人なら、『1』。二人なら『2』とメモに書いてくださ


い。」


「おかしなやりかただ。」


 また、親分が文句を言ったのです。


「じゃあ、口で言ってもらいますか?」


 まあ、反論は来ませんでした。




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