第9話 『市役所』その5
「まあ、実際のところ、彼らがこの島から出るとなると、大事でしょうけれど、この島の中で、本土の企業などの仕事に就くのであれば、なんの問題もないと、ぼくは本庁に報告しました。政府機関もそう判断したのですよ。だから、まあ、こういうことになったと、いうわけです。」
「ふうん・・・」
親分がなんとなく意味深らしくに、唸りました。
しかし、こいつの頭の中は、ぼくにもよくわかりません。
「まあ、われわれは、実務を誠実にするだけですからね。」
番長が僕を見ながら言いました。
「そうね。」
ぼくは肯きました。
それで、納得したように、アンドー・タロウ係長は続けました。
「では、これが当日の資料です。」
彼は、全員分の資料を、各自に渡してくれました。
「一枚目が、当日の進行表です。それから、二枚目が分担表ですね。あと会場内の配置図ですね。それから・・・」
「会場までの案内図とかはありますか? 我々には、ここの地理が不案内です・・・」
親分がさっそく突っ込みました。
「ああ、失礼、あらら入れて無かったかな・・・ちょっとミスです、持ってまいりますね。ああ、君も来て・・・」
係長さまは、あわてて部屋から出てゆきました。
目に見えない係官も、いっしょに出て行ったらしいです。
すると、お嬢がメモを書いて全員にそっと見せました。
「あいつ、普通じゃない。乗り移られてる、とかも・・・。」
「え!?」
全員が、顔を見合わせました。
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