第7話 『市役所』その3

 会議室の中は、もちろん空っぽでした。


 ひんやりとした空気が漂っていて、当分は、人が入っていないことを明らかにしている様子です。


 折り畳み式のテーブルが、ロの字型に組まれていて、椅子が8つ置かれておりました。


 資料とか、パソコンとか、何にもありません。


 ただ、内線電話だけは、きちんと部屋の角の、小さな電話テーブルに乗っかっていました。


「はあ・・・準備なし?」


 番長が言いました。


「まあ、ここで仕事するわけでもないだろう。」


 ぼくが言いました。


「まあねえ。」


 番長がぼんやりと、答えました。


 となりで、お嬢が、白紙に何か絵を描いています。


「なんだろう?」


 まるで、木星のような感じ・・・でも、『目』らしきものが、たくさん北半球の周囲に配置されていて、赤道付近全体が、牙のようなものでぐるっと覆われているのです。 


「ぎょ!」


 すると、そこで、ノックの音がして、ドアが開いたのでした。


 ぼくたちは、息をのみました。


 入ってきたのは、中年の入り口くらいという感じの、普通のおじさんでした。


 頭の中央が、ちょっと薄く、・・・危なくなってきているようです。


「やあ、お待たせいたしましたあ。」


 なにやら、大きな資料綴りを三つ四つ、抱えてきています。


「はあ・・・やれやれ・・・、」


 ぼくたちは、一様に、とりあえず、安心したのでした。


 ちらっと、お嬢の手元を再び見てみると、その絵の描かれた紙を、さっと下側にしまい込んで、たたんでいたようでした。



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