第6話 『市役所』その2

 市役所の支所にしては、非常に広くてりっぱな階段なのです。


 どう見たって、県庁クラスの重厚さがあり、建築素材も豪華なものを多用しているに違いありません。


 どこも、ぴかぴかで、反射が眩しいくらいです。


 しかし、階段にも、踊り場にも、人っ子一人見えないのです。


 大体、声というものが全く聞こえません。


 普通の市役所では、あり得ないくらいに静かなのです。


 途中で2階のフロアも覗いてみましたが、いやまあ、きれいさっぱり、誰も見当たりません。


 いや、います。


 確かに、いた!


 奥の方で、ごぞごそと、怪しげな黒いものが、動いているのです。


 人間に違いありません。


 確かに、各部課に数人ずつは、配置されているはずなのです。


 生身の人間が、です。


「お嬢、あの人らしきもの以外にも、誰かいるの?」


 番長が尋ねました。


「うん。」


 お嬢は肯きましたが、それ以上は、答えようとしません。


「まあ、どこもこんな感じだな。目的地に行こうか。」


 ぼくが促しました。


 大将も、これには同意。


 ぼくたちは、3階の『総務部総務課』に向かいました。



 **********   *********


 階段からでて、すぐ右側に入ると、再び『受付』がありました。


 ここもまた、きれいさっぱり、誰もいませんけれど。


 と、突然受付にあったモニターが動きました。


『いらしゃいませ。ご用件は❓』


 と、表示されました。


「あの、本庁からまいりました、『面接会応援班』です。」


 すると・・・


『あ、ご苦労様です。では、床の赤い表示に沿ってお進みください。『会議室301』にお入りください。』


「会議室って・・・・」


 すると・・・・・


 なんと、床の少し上の空間に、赤い矢印が、ふんわりと浮かび上がったのです。


「おわ。これは、新システムか!?」


 ぼくはびっくりしました。


「行きましょうか。」


 番長が率先して歩き始めました。


 すると、それを押しのけるようにしながら親分が先に行き、お嬢がぼくを横目で眺めながら続き・・・


 でも、さすがに一番若い王子は、気にして言いました。


「ああ、どうぞ、統括官殿。」


「いや、ども。」


 という、実に適正な順番で、その赤い矢印を追いかけることになったのであります。


 

 **********   **********











 






















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