第4話 『昼食』その2

「はい、『プテラノドン』です。」


 ぼくと番長の目の前に、どかんと大きなどんぶりが置かれました。


 すでに、他の人には、注文したものがやってきていましたから、これで、みなそろった訳です。


 まあ、一応、職責上は、ぼくと、ナンバー2の、番長の用意ができるまでは、待ってくれていた、という、ところでしょう。


「じゃあ、いただきます。」


 ぼくが、そう言いまして、全員が「いただきます」をして、食事は開始されました。


 しかし、注目の的は、明らかに『プテラノドン』だったわけです。


「いざ!覚悟!」


 と、まあ、言うほどでもないけれど、ぼくは、その蓋を開けました。


「おおお!」


 番長が言いました。


 ほわっと、湯気が立ち上ります。


「トリどんと、同じだ・・・」


「うん、おんなじ感じだねえ。」


 そうです。


 見た目は、普通の『トリどん』と変わりません。


 ただ、お肉がやたら大きいです。


 その大きなお肉の周辺には、青いネギとか、玉ねぎとか、ピーマンらしきものとか、ちょっと、しょうがっぽいものも見えております。


「ふうん・・・・まあ、『プテラノドン』は、とりじゃあないよな。」

 これは、ぼく。


「翼竜ですから、爬虫網ではないかと。」

 これは、番長。


「とかげですな。」

 意地悪な、親分。


「食用とかげですか。」

 王子。


「まあ、せっかくですからね。」

 ぼくは、用意されたお箸で、大きなお肉の塊をつまみ、ぽいとお口に放り込みました。


「おおお・・・・うまい。こりゃあ、トリだ。いや、とっても、淡泊、ヘルシー!」


「どれどれ・・・・・」

 番長も、続きました。


「いやあ、とりじゃん!」

 番長が述べました。


「味付けしたら、皆同じですから。」

 意地悪な親分が言いました。


 しかし、あとは、皆無言で、淡々とお食事の時間が、進行したのであります。



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 とはいえ、昼食ですし、お酒もなく、そんなに時間はかかりません。


「とくに、変身とかは、しそうにないですな。」

 意地悪な親分が、実況解説をして、食事は終了となりました。


「ああ、お支払いは、職責上、ぼくがいたします。」


「ごちそうさま!」

 これは、無事に、全員から発せられました。


 ただ、皆が無言になったのには、いささか理由があります。


 つまり、周囲には、見えない人(幽霊さん)が、けっこういらっしゃったよう、だったからでした。


 店員さんが、食事を空っぽのテーブルに運び、やがてその、ナイフとかフォークとかが勝手に宙に浮かびあがり、どんぶりが宙を舞い、食べ物が空間に消滅するのです。


 それはまあ、想像するに、あまりある光景だったのです。


 そりゃあ、みんな口が重くなると言うものです。


 そもそも、幽霊さんがお食事をすると言うのも、不思議と言う気もしますが、考えてみれば、ぼくだってお仏壇にお食事を用意します。


 ただ、実際に幽霊さんが、食物を食べるのを見たのは、初めてでしたから、びっくりもします。


「じゃあ、お会計します。」


 ぼくは、伝票を持って、レジに向かいました。


「ああ、このカード使えますか?」


「はい、国内ですから。」


 そりゃあ、そうです。


 そこで、お会計自体は、何の変りもなく、きちんと行われました。



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