第3話 『昼食』その1

「まあ、とにかく注文しよう。みんな、腹減ったでしょう?」

 親分が言いました。


 やっと、まともな雰囲気のところに来た感じで、やれやれで、あります。


「さてと、何にしようかなあ?」


 と、メニューを見れば・・・


「ううん・・・・『トンマドン』って、なんだろう?」


 ぼくがつぶやきます。


「その後はまともですよ。『テンドン』『ウナドン』『タマゴドン』『プテラノドン』・・・プテラノドン? ってなに?」

 番長です。


「さあ・・・??? 」


「『引き際ラーメン』ってのもあるわ。ここは、ひとつ聞いてみましょうよ。」

 と、番長が言うのです。


「当り前なの、頼んだらいいんじゃないですか?」

 と、こんどは、むつこが言うのですが、そこは番長は、後に引きません。


 親分はだんまりを決め込んでいます。

 こいつは、要領はとても良くて、自分が目立たないところでは、あまり口を出しません。


「あの~、すいません。」


 番長が、さきほどの愛想のいいお店の人に、声を掛けました。


「はいはい、なんにいたしましょうか?」


「あのう、この『プテラノドン』とか『トンマドン』って、なんですか?」


「ああ、『プテラノドン』は翼竜のお肉をたっぷりと使った『どんぶり』ですよ。『トンマドン』は、馬と豚の中間種を使っていますよ。本物ですから。ご心配なく。」


「ホンモノって・・・『翼竜って』あの、飛ぶやつ・・・ですか?」


「はいー。この島の奥地には、多数生息しています。おいしいですよ。ここでしか

、食べられないものですから。ひとつ、いかがですか?」


「はあ・・・・・」

 さすがの番長が感心をしています。


「あたしは、普通の『テンドン』で。」

 お嬢=むつこ、が、なぜか少し緊張気味に、言いました。

 早くキリを付けたかったようです。


「ぼくは、普通のラーメンで。」

 親分がそこに乗りました。


 貴公子のような雰囲気の王子は、ぼくと親分を見比べながら言いました。

「じゃあ、ぼくは、『オヤコドン』で・・・あの、これ鳥の親子ですよね・・・」


「はいー。ごく普通の『オヤコドン』ですよ。」


 となると、残ったのは、番長とぼくです。


 しかし、番長は、こんなことでは、負けません。


「ふうん・・・・この『引き際ラーメン』って、なんですか?」


「それは、当店の名物ですよ。人生の引き際に食べると、多くの御利益があるラーメンと言われております。」


「御利益???」


「はいー。天国に行けます!!」


「あああ、・・・あの、普通の『チャーハン』でお願いします。」


 みんなが僕の顔を見ました。


「あの、じゃあ、『プテラノドン』を・・・・」


「はあ?」


 親分が小さく、人をコバカにしたように言いました。


「くそ・・・こやつ、また・・・」


 とは思いましたが、まあ、言いはしません。


「じゃあ、あたしも、そっちに変えます。」

 番長が言いました。


 なんだか、番長と親分との間で、また火花が散っています。


「やれやれ・・・」


 先が思いやられるのです。


 と、なんだか、何も見えないのに、レジが、がしゃっと鳴り、何も見えないのに、お金が宙に浮かび、消えました。


 それから、誰もいないのに、自動ドアが開き、また、閉まりました。


「まいどー。またどうぞ~」


 先ほどの店員さんが、気持ちよく言っています。


「みなさまには、見えないんでしょうけれどね・・」

 お嬢が、ぼそっと、つぶやきました。


 ぼくは、ちょっと寒気がして、周囲を見回したのです。



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