救済者

「私達管理者は、世界が転生する度に、世界を管理してきた。9247回もの転生をしてきた。それだけの世界を見続けてきた。そして、それから逃げることは出来ない」


「レアルは、無限の自身と繋がることによって無限の演算能力を持つ管理者だ。そして、世界の変化を促す事で、停滞を防ぐ存在だ。だが、どんな変化を降り注ごうとも、演算能力の高すぎるレアルには解ってやっている事柄に過ぎない。変化を好むレアルだが、それはレアルの望んだ変化ではない。それでも、変化の無い変化であっても、変化させ続けなければならない。享楽的に行動するが、本当に楽しんでいたと言えるのだろうか」


「エンシェントは、自然と調和の存在として、世界を見る管理者だ。そして、この世界が破綻しないように抑制する存在だ。故に、世界を守るという意思が一番強いのだろう。だが、度重なる転生によって、世界は歪に歪んでしまった。超自然の存在である奴の祈りは強い力を持っていた、その祈りをもってしても、世界は歪み続けた。延々と祈り続けたが、世界は変わらない。そして、いつしか目の前の正常さだけを見るようになってしまった」


「イニシエンは、何事も気にせず、固定概念に革命をもたらす管理者。そして、王者としての傲慢さと、導く力を持った存在。理想を好み、結果を良いものにする為ならば、過程は問わない。そして、王者として民の上に立つ存在が、世界の転生を止めようとしないわけが無い。休むという事をせず、行動し続ける奴ではあるが、常に行動し続けることの難しさを解っているのか。本当に希望を持って行動していたと言えるのか」


「私は、神聖の管理者として、ここに居る。混沌のように何かを犠牲にしてまで得ることも、秩序のように自然と共に歩調を合わせることも、邪悪のように欲に任せて行動することも、疲れてしまった存在に平穏を与え、救済する存在として。だが、貴様ならわかるだろう。ハリボテのような私の存在を。実際に、私の存在は希薄だ。それでも、長い間この世界に存在してきた」


「管理者の力は、管理者にしか扱えない。だが、それが記憶の断片として扱うのならば……。制限の無い〈外部〉としての貴様が管理者の力を記憶の断片として扱えば、この世界を破壊する事が出来るはずだ。もう既に4つは集まっている。後は1つだけだ」


「頼む。もう良いだろう……。私達に安息を。この世界に縛られ続けている私達を救済してくれ。……あぁ、レアル。今から会いに行こう」


 俺を縛っている鎖は消えた。その瞬間、時間が動いたような感覚に襲われた。メビウスに向って振り上げ、振り下ろそうとしていた〈アンマグネクス〉はそのままメビウスを切り裂いてしまった。切り裂かれ消えていった。そして、4つの記憶の断片が俺の中に入ってくるのを感じた。


「ヌル君。頑張ったね、この先に中立の管理者フォルフルゴートが居るよ。さぁ、一緒に行こうか」


 いつの間にか来ていたのか、リアの声がする。そして、導かれるままに先に進んでいった。


俺は一つの答えを得た。何をしなければいけないのか

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