絶望に沈む

「準備に時間のかかる結界は、わたくしのスキルブレイクで構築前に破壊できます。それなら、やることは一つだけです。エメレイア! エルフェさん! レアルを制圧してください!」


「言われなくても解っているのだよ」


「ちゃんと暴れさせてもらうわよー」


 ロジクマスが指示しつつ、メビウスの牽制。エルフェとエメレイアでレアルを撃破していく。上手くいけば、押していけるかも知れない。俺はこのままだが。


「なんなんだよ。ディレイスクラップ停止しな!」


 だが、ディレイスクラップこと、エルフェは一瞬動きが止まるものの、すぐに動き出す。命令を受けてもすぐにレジストできるようだ。


「私も忘れないで欲しいわぁー。拳技せんげん[インパクト]」


 エメレイアは残った腕で拳を突き出すが、レアルは身軽に回避しつつ、銃を撃つ。


「させるわけが無いでしょう。光術せんげん[バリア]」


混沌せんげん[愛憎の抱擁]」


 だが、その銃撃もロジクマスの障壁に阻まれる。その隙にエルフェはレアルに近寄っていく。そして、その大きな身体を開いて、レアルをプレスした。


「あぁ、解ってるよ。アタイの最後の役目って奴をなぁ!」


 エルフェがプレスした直後。15体のレアルが部屋の中に出現する。レアル・グリードの正体はネットワーク。その中心核となるコアを壊さない限り倒すことは不可能。


「何をする気ですか!?」


 15体のレアルは、一気にエルフェに向って走り出す。明らかに何かを狙っている。これは止めないとマズイかもしれない。だが、俺は能力さえも発動できない。


「足止めするわー。魔法せんげん[リ・クエイク]」


「そんなもの効くか!」


 エメレイアの魔法で地震が起きるが、レアルの足からジェットが噴射されて、身体を浮かす。そのままエルフェに一直線に向っている。


「なんとしても阻みます! 光術せんげん[バリア]」


 エルフェに障壁を張るロジクマス。だが、エルフェに視線を置きすぎだ。レアルの姿が、13人しか見えない!


「グアッ!」


「キャア!」


 ロジクマスと、エメレイアの後ろに転移していたレアルが首元に手刀を加える。二人は地に倒れ、レアルに担がれる。そして、頭に銃を向け。


「何をする気なのかね? なかなか卑怯だと思うのだよ」


「その通りだ。ほら、ディレイスクラップ。変なことをするんじゃねぇよ?」


 ロジクマスとエメレイアを担いだ二人のレアルは、エルフェに近寄っていく。人質にして、何とか機能を停止させようとでもいうのか。だが、俺にだけ見える角度で、ロジクマスが軽く手を振った。気絶しているフリなのか。そして、レアルはエルフェの周囲を取り囲んだ。


「エルフェは流石に何も出来ないのだよ。エルフェが出来ないだけなのだがね!」


「今です! エメレイア! 魔法せんげん[デスブレイズ]」


「解ってるわよぉー」


 消えることの無い黒炎を至近距離で放たれたレアルに燃え移り、ロジクマスとエメレイアはエルフェの上に飛び乗った。


「さて、チェックメイトです。私の策は管理者さえも越えました! 光術せんげん[マジックバリア]」


 エルフェと自分達をマジックバリアで包み込む。これによって黒炎による被害は受けない。レアルの方は、囲っていただけあり、距離が近すぎて次々に燃え移ってしまっている。


「残念だったな。詰みなのはテメェラだよ。アタイはな、最初からこんな結末だろうと思っていたさ!」


 エルフェを囲っていたレアルが自爆した。轟音と強烈な光。マジックバリアには魔法以外の耐性は無い。つまり……。それらが過ぎ去った後には、ガラクタのような金属の山しか残っていない。しかし、ガサガサという音が……。


「すまない、レアル。こんな役目ばかりを押し付けて」


「良いんだよ。アタイは、メビウスを信じてるから」


 金属の山から這い出てきたのは、ボロボロになったレアルだった。這って、メビウスの側まで来ると、小さな金属の球体を差し出した。


「レアル、必ず。私達の目的を達成しよう」


「うん! メビウスなら出来るって信じてるから。先行って待ってるね!」


 メビウスは木の棒のような手で、その球体を砕いた。そして、レアルはそれから、動くことは無かった。


「待っていてくれ。私もすぐに行くからな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る