効果の限界値
エルフェにメールを送りながら先に進む。だけど、ヌルの足取りが重い。理由は解る、グリアを置いてきた事。でも、仕方なかったと受け止めてもらうしかないの。
「ねぇ、そんなにグリアの事が気になる?」
「当たり前だ」
そうよね。おそらくグリアは勝てない。秘策があっても、助かる可能性は皆無なのよね。だって、そもそも戦う為の力が無いんだから。
「ボクもグリアも、ヌルを利用しようとして付いて来たんだよ。だから、心配されても罪悪感しかうまないよ。それに、グリアの選択を否定しないで」
「……」
「ボクは出力機。情報にまみれた時代をコンセプトに創られた。増えすぎた出力機は沢山の情報を吐き出して人間を追い込むんだ。そして、ボクはそんな人間を自殺に追い込む。サイクルシステムや、イフペーストとは違うし、アトムビジョンとも違う。明確に人殺しの為に造られたんだよ」
相変わらずヌルの表情はそこまで変わらない。けど、何か考え込んでるみたいだね。深く考えすぎる所があんまり良くないと思うよ。
「あぁもう! そんなに考え込まないでよ! ただの殺人プログラムとして造られたボクがこう暢気で居るのはね、単純に疑問だったからなんだよ。それで、レアルの所から逃げて、逃げた先で人間として暮らしてね、仲良くなった人ともっと一緒に居たいと思って過ごしてたからなんだよ。凄く単純でしょ?」
「そんな事があったのか」
「あぁもう! 違う! ボクが言いたいのはね! やりたいようにやったらいいでしょって事だよ。ボクもグリアもやりたいようにやってるんだよ」
そんな話をしながら廊下を進んでいくと、また広間に出た。広間の向こう側には扉があって、立ちふさがるように、天使が扉の前に立ってる。
「アローンクローズ……」
「どうしたのかな。ヌル君。もしかして僕が味方だとでも思ってたのかな? それなら残念だったね。僕はなんにも興味が無いんだ。それに君の仲間だと言った事は無かったよね。えっ? いつものパターンかとでも言うのかな、うんそうだよ。いつものパターンだったね。そして、さっきと同じような問答になるんだけどね、そろそろ嫌かい? 解ったよ。じゃあ簡潔に言うけどね……」
「ヌル! そんな奴の話聞かないで! 早く先に進んで! ここはボクが何とかするから!」
「だが……」
「あぁもう! グリアの思いを無駄にするつもり!」
やっと、ヌルが動き出した。アローンクローズがヌルの邪魔をしないように、拳銃で牽制する。あまり効いてる様子は無いけど、その場から動かない。なんとか、ヌルが先に進めたね。
「僕の目的はヌル君以外の足止めだから、そんな事しなくても意味無いんだよね。うん、解ってる。信用できないって言う……」
「ボクには関係ないね!
タブレットでマシンガンの画像を検索する。画面に手を突っ込んで、画像のマシンガンを引っ張り出す。そして、アローンクローズに乱射する。
「僕は虚な存在。皆皆、見せかけだけ。まるで存在を認知出来ない、本当にあるのかも解らない。いや、本当はただの虚像なんだよね。だから。
アローンクローズの姿が変わった。白い衣に白い翼、そして天使の輪。だけど、顔の部分が空洞な木の人形になってる。そして、ボクの弾丸は、まるでアローンクローズがそこに居ないかのように素通りしていった。
「こうなったら……。検索、小型モニター、画像」
このタブレットから引き出せるギリギリの大きさのモニターの画像を検索する。そして、走りながら色々な場所にモニターを置いていく。
「信仰だって虚像だよ。真実だって虚像だよ。そこにあると思って行動してるんだろうけど、本当は何にも無いんだよ」
「うるさいな。本物の景色はカメラ越しでも本物、録画したものも本物、それをテレビで見ても本物。どこからが現実じゃないのか、なんて関係無いね。全部本物にしてしまえばいいんだ。
色んなところに設置したモニターが起動する。タブレットの中に保存してた時限爆弾の画像をモニターに転送する。これで決めようと思う。
「神聖が神聖であるために、邪悪は邪悪なんだ。プロパガンダも驚きだね。本当に虚像でしか無いんだよ」
「まぁ、ボクは元々が電脳だから。例え、ボクを本物にしても。ボクは本物になんてなれないんだ」
モニターの時限爆弾が爆発して、辺りを煙で包み込む。ボクはアローンクローズに接近して、タブレットを振り下ろして、中に閉じ込める。
「本当に良いのかい? これで終わってしまっても良いのかい? 別に僕は構わないけど、なんだかパッとしない終わり方だね」
「別に良いんだよ。どうせボクは繋ぎでしかないしね。それに、これでやっとレアルを倒せるんだ。どうせ生きても無いようなボクの存在。それでも、ここまで出来るんだよ。そう、思わせといてくれないかな?」
エルフェはあの三人なら対処できる。だけど、この天使は未知数。ここで終わらせないといけない。アローンクローズの映像を映してる
ボクが存在した意味はあったかな
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