熱と原子炉
「私は原子炉だ。ハッ! 焼き尽くしてやるよ!」
「熱の精霊であるあたしに向って、焼き尽くすなんて、凄いこと言うね」
相手は、左腕が機械みたいになってて、なんか棒が沢山突き刺さってるの以外は、普通の女性。でも、こんなになってたら普通じゃないよね。あたし達と、混沌側は戦うことが少なくは無いから、お互いに大体の能力は解ってる。アトムビジョンほどの熱量だと、あたしも散らされちゃう。
「ハッ! 知らないな!
高熱の光線を放ってくるけど、発射までタイムラグがあるからかわす。直撃しなくても、凄い熱量だけど、流石にそれくらいではダメージ受けないよ。生身なグリアだとやばかったかもね。
「でも、どうしよう」
あたしよりも高熱を発してるアトムビジョンに、熱の魔法は効かない筈だから。熱を収束させて火にする魔法、紅点突破しかない。だけど、威力は向こうの方が上だから、相殺どころか押し負ける。隙を突いて放つしかないんだよね。
「チッ! 黙って当たれよ!
「当たるわけ無いじゃん。
熱しを収束しつつ、アトムビジョンの放射線状から逃げて、熱によって出来た火の槍を投げつける。直撃させたけど、やっぱりそんなに効いてないみたいだね。
「ハッ! 効かねぇよ!
「だから、隙が大きいよ。
アトムビジョンの行動は鈍すぎる。あたしを爆撃しようとするけど、タイムラグのせいで簡単に避けて、攻撃が出来る。大したダメージにはならないけど、それでも積み重ねていけば、勝てる。
「チッ! ウザイんだよ! 黙って当たってろよ!」
「嫌に決まってるじゃん。これ以上は無駄だから戦うのやめたら?」
「ハッ! 私は戦う為に造られたんだ。断じて、幻想に変貌させる原子力として造られた訳じゃねぇ!」
なんかよく解らないけど、錯乱し始めたアトムビジョン。情緒不安定? なんにしても、このまま行けば勝てるね。
「どんなに高火力でも、当たらなければ意味が無い。あたしの勝ちだよ」
「アァッ! ふざけるなよ、ふざけてるんじゃねぇよ! 私の使い道が無いなんて言わせねぇんだよ!
アトムビジョンの左腕に突き刺さっていた棒が全て抜け落ちた。あれは強すぎるアトムビジョンの力を制御する為のものだったはず。それが無くなると制御が効かなくて自分にもダメージが来る。それなら、あたしは避けまくるだけだね。
「生き物でなくても、命を燃やすんだね」
「ハッ! 黙って消えろ!
アトムビジョンは放っていく光線とか、爆撃をどんどん避ける。制御がなくなってから、タイムラグは解消されたけど、それでも動き続けていれば当たらないよ。先読みをさせないようにランダムで動き続ける。あたしはフロウほど早くは動けないけど、三次元で動けるから回避能力は高いはず。
「意味なんてな……い?」
フロウの存在が消えた? 何で、フロウが負けたの? 探知出来なくなっただけ? こんなやつらに負けるわけなんて無い。でも、何で……
「消えろよ!
「うわぁ!!」
やばい、考えごとに夢中で回避が疎かになってた。飛んできた光線を避けようとしたけど、片腕吹き飛ばされた。フロウは、大丈夫なはず。今の戦いに集中しないと。
「ハッ! そのまま消えちまえよ!」
「精霊を舐めるなぁ! この程度で負けるか!」
力を集中させて失った部分を再生させる。精霊が力と呼ぶものは、生命力。エンシェント様はこの生命力を共生の力で増幅して、精霊に供給してる。グリアに力を貰ってなかったら、ここで散って消えてしまっていた。
「一気に消し飛ばすしかないな!
「うわ……」
アトムビジョンを中心に凄い熱が発生してる。もう、床とか赤くなって、溶けてしまうんじゃないかってくらい。あたしは大丈夫だけど、グリアは大丈夫!?
「末路と惨状。ハッ! 知ったことか!
アトムビジョンの右腕を突き破って、中の機械が飛び出た……。いや、右腕だけじゃない、身体の色んな所を突き破って中から機械が飛び出てきてる。そして、それぞれが光線とか、爆撃とか、乱発射してきた!
「迷惑な命の燃やし方だよ!?」
「知るかぁ! 原発事故がなんだ! 望んだくせに、ふざけるなぁ!!」
乱射の中逃げまくってるけど、避けきれない! 足とか腕とか吹っ飛ばされる。だけど、アトムビジョンは自分の熱に耐えられなくなって、溶けてきている。何とか、ここを耐えれば!
「アハハ……。あたしの勝ちだよ」
アトムビジョンの攻撃が止まった。あたしは身体の所々が吹き飛ばされて凄いことになってるけど、アトムビジョンは溶けて、蒸気噴出して、バチバチと火花が散ってる。
「私は……。もっと、使われたかった……。兵器でも、何でもいいから……」
アトムビジョンはそれだけ言うと、動かなくなった。あたしも再生できなくなってる。力の供給が途絶えてる。だんだん自分が散っていってる。
「これから、どうなっちゃうんだろ。頑張ってれば、良い方にむかうよね……」
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