大番狂わせ?
「来いよ。お前の覚悟を見せてみろ」
イニシエンはその場から動かない。とりあえず、遠距離から様子を見よう。見た目では遠距離タイプには見えない。ただ、武器を持っていない所を考えると、何らかの能力を使ってくることを考慮したほうが良いかも知れない。
「
「ふん、その程度か」
火球を放つが、イニシエンはその場を動かず、飛んできた火球を殴りつけ、その進路をずらした。まさかこんな方法で対処されるとは想定外だ。風ならどうだろうか
「せんげ……」
「おい、小賢しいぞ。
「ガハッ……!?」
イニシエンは拳を突き出す。距離も関係なく俺に衝撃が襲ってきた。腕が伸びたわけでも、俺が近づいたわけでもない。ただ、全てを無視して攻撃が当たったとしか言えない。
「距離なんざ知ったことか! いいか、俺が本気で攻撃していたらお前はミンチになっていたぞ」
「クッ……。
自分の周囲に境界を創る。ロジクマスのように能力を無効化する能力を持っていたら無意味だが、何とか状況を立て直して、倒す術を考えなくては。
「だからな、そんなもの知ったことか!
「グッ……!?」
境界で遮断しても、関係なく殴ってくる。これは、どんな方法を使ってもそれら全てを無視して攻撃できるという事なんだろうか。それなら、どうやって戦えばいい?
「あぁもう! 本当に気に入らないですわ! どうしてそんなにも無視しますの!? もう怒りましたわよ!
ずっと蚊帳の外だったアイムがとうとう怒り出して、イニシエンに水の刃を放った。その攻撃はイニシエンの鎧に阻まれて大して効いていないようだ。そもそも、アイムのサイズが小さくなってしまっているせいか、水の刃のサイズも小さくなっていて、本当にダメージにはならなさそうだ。
「邪魔すんじゃねぇよ!
「キャア!?」
イニシエンの拳がアイムに直撃。距離もアイムの性質も全て無視して当たったのだろうか。攻撃を受けたアイムは気絶しているようだ。
「正々堂々と挑みに来いよ! 正々堂々返り討ちにしてやる! 小賢しい策なんて知るか、全力前進! 覚悟を見せろ!」
そうか、そういうことか。〈アンマグネクス〉を構えてイニシエンの元へ一直線に挑もう。俺のすべきことはイニシエンを倒すことじゃない、イニシエンに認めさせる事だ!
「これは俺の道だ。誰にも邪魔させない」
「そうかよ。だが、知らないな! 俺は俺の目的を達成させる為なら何でもしてやろう!」
〈アンマグネクス〉を振るう。イニシエンは剣の腹を殴っては軌道を変えて攻撃を防ぎつつ、もう片方の拳で攻撃をしてくる。それを何とか回避しながら。攻防を続ける。
「知りたいと思ったんだ。この世界の意味を、俺がここにいる意味を!」
「俺は叶えてやろう。この世界が平和になって、全ての民が幸せに暮らせる未来をな! 陳腐な王道の物語で十分だ。それを魔王である俺様が望んでいる! 俺様は邪悪の魔王だ、目的を達成する為に善悪なんて知ったことか! どんなことでもする覚悟が、俺にはあるぞ!」
イニシエンの攻撃を回避……。しようとしたがそれはフェイント。大振りに拳が迫ってくるが、回避できない。〈アンマグネクス〉でどうにか守るが……。イニシエンの攻撃によって、とうとう〈アンマグネクス〉に皹が入った。そういえば、レアルに貰ったナイフがあったな。一か八か投げてみよう。
「まだ負けな……?」
ナイフを取り出して投げようとしたが。イニシエンの後ろに、唐突に何かが転移してきた。アローンクローズ。腕をこちらに向けて
「
アローンクローズが光線を放ってきた。状況が理解できないが、俺とイニシエンはその場から飛びのく。だが、光線は軌道を変えて、アイムに直撃した。弱化していたアイムはまるで蒸発したかのように、その存在を消し去った。
「お前、何のつもりだ」
「僕はね、本当にどうでも良いんだ。この世界の継続にも興味は無くてね、世界が滅びたって別に構わないんだ。誰かの言いなりに行動することになっても別に気にしないんだよね。うん、知ってるよ。意味がわからないんでしょ。じゃあ、こう言おうかな。メビウスの作戦通りってね。
アローンクローズは光を放った。まぶしくて目を開けていられない。そして光が止んで目を開けた。そして。見えた光景は。イニシエンが16人のレアル・グリードに囲まれて、銃を向けられていた。
「ククッ、ご苦労。動揺しているようだが、これは全て正常の進行と言っておこう」
「ジガイガ……!?」
後ろから首元に何かを突きつけられている。おそらく、さっきまで持っていた筈のナイフだ。アローンクローズとジダイガとレアルは共謀していたということか。だが、目的は何だ。
「クハハ! 私の本当の名前を教えてやろう。私は大天使メビウス、神聖の管理者であり救済と平穏を与える者。そして、この世界の終焉を望む存在だ」
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