革命の覚悟!

「一体、何をしてくれたのでしょう?」


 契約は、1対1で決着を付けると言うもの。だが、ここでアイムが介入してしまった為にその契約は破棄されてしまったという事か。だが、何故アイムの存在をロジクマスは見ることが出来なかったのか……。そうか、存在が希薄になっているからか。だから、ロジクマスはアイムの存在に気がつけなかった。


「まさかこんな抜け道があるとはな」


「はぁ? ふざけないで下さいよ……。あー、もう知りません! こうなったら貴方の頭だけでもイニシエン様の所に連れて行きます。抵抗なんて出来ると思わないで下さいね?」


 今までその場から一度も動かなかったロジクマスが近寄ってくる。状況が更に悪くなったような気がしてならない。考えようによっては、射程の短い消滅の光を上手く使えるかもしれない。射程内に入った瞬間……


「待て、俺が相手する」


 俺とロジクマスの間の空間が割れて、その隙間から悠然と歩いてくるのは、魔王ラギ・イニシエン。禍々しい鎧を纏った姿はまさに魔王だ。


「イニシエン様。わたくしが……」


「いや、ここは俺に任せろ。それとも、俺様だと心配だとでも言うのか?」


「解りました……」


 イニシエンと入れ替わりに、ロジクマスが空間の隙間に入っていく。そして、空間は閉じ、イニシエンと向き合った。


「なぁ、俺に何を聞きたいんだ?」


「メビウスの居場所」


「メビウスに会ってどうするつもりなんだ?」


「メビウスに興味は無い。ただ、中立の管理者に会う方法を閉ざされてしまったため、仕方なく会いに行くだけだ」


「俺と協力してメビウスを倒し、フォルの奴から無理やり必要なことを聞き出すっていうのはどうだ?」


「成功するとは限らない。それに、これは俺個人として目的だからだ」


 沈黙がその場を支配する。俺もイニシエンも動かない。これは、俺が達成したい目的なんだ。それに、イニシエンとは相容れない。そんな予感がする。やっと気づいたもの、確固とした俺を手に入れたから見えたもの……


「なぁ、俺は楽園を創りたいんだ」


「……」


「本来なら戻ってくる筈も無い、ロジクマスもエメレイアも帰ってきたんだ。それなら、俺の仲間が皆帰ってくる可能性だってあるはずだろ?」


「偶然だ」


「それなら、もう一度偶然を起こしてやるよ。けどな、仲間を呼び戻す前にこの世界を何とかしなければいけない。その可能性があるのなら、俺はどんな手段でも使ってやる」


「俺が〈外部〉としての存在だからか」


「〈外部〉であれば〈零の映写機希構〉に接続できるはずだ。この世界を根本から変えられる可能性があるんだ。この世界は、転生を繰り返す度に世界に生きる存在をも道連れにしてきた! 世界に生きる存在も、世界の一部に過ぎないのだからな! だが、俺は納得できない。何故俺の民は死ななければならなかった! 全てはこの世界が欠陥品だからだ! いちいちリセットしなければ保てない不出来な世界だからだ!」


「……」


「俺は何度も何度も、何度も何度も何度も何度も。何度も! 世界を変えるために行動してきた! 九千を越える転生を果たしてもその思いは一度だって消えたことは無い! 俺は覚悟を決めたんだ、何があっても前に進むと!」


 イニシエンから発せられる覇気とでも言うのだろうか、この威圧感。静かな圧力と、真っ直ぐな視線と、狂気。イニシエンは本気だ。意思を曲げるつもりなんて全く無い。だが、俺も簡単に意思を曲げるつもりは無い。これが、俺の辿る道だからだ。


「それでも、俺の思いを受け入れられないと言うのなら……。覚悟を抱け! 全力前進! お前の覚悟を俺にぶつけて来い! 俺の覚悟で迎え撃ってやろう!」

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