希望のバトン
「さて、貴様の疑問に答えてやろう。ジダイガという名はある人間から受け取ったものだ。つまり、私がジダイガという名を名乗っても嘘ではない。そして、確かに管理者とするのは早計と言ったが、私が管理者であることを否定した訳では無い」
つまり、ジダイガ……。いや、メビウスは嘘をついていないといいたい訳だ。ジダイガがメビウスならば、レアルの言っていた事も間違いでは無くなる。初めから、レアルはメビウスの味方だったのか。
「ふざけるな! 俺達の戦いに水をさしやがって!」
「おっと、イニシエン。貴様が行動した瞬間。ヌルの首は無いと思え」
「どこまでも卑怯な野郎が!」
「さて、もう察していると思うが。貴様の持っている転移の鍵、それが私にとって位置を特定するための道具ということだ。レアルの渡したナイフも、レアルにとっての位置特定の道具だ。つまり、初めから貴様の監視目的で渡していたということだ」
だが、まだわからない。こんなことをして何があるというのか。世界を破壊しようとしている事は解っている。だが、このことのどこがそれにつながるのか。
「ねぇ、アタイはメビウスの作戦ほとんど聞いてないんだけど」
「すまないな、レアル。この作戦はレアルにも話すわけにいかない」
「そうなんだ。それなら仕方ないよね」
イニシエンを囲んでいるレアルの一人がメビウスに話しかける。あの話しかけているレアルが本物なのか、他のは分身なんだろうか。
「レアルは分身出来たのか?」
「レアル・グリードは機械だ。その身体はいくらでも生産できる。核を壊さない限り意味ねぇんだよ」
「でも、世界が崩壊したせいでアタイの生産能力が落ちて、なんとか用意したのがこれだけなんだよね」
「そうか、たったの16体か。それなら……。問題ないな!」
イニシエンが腕を振るうと、全てのレアルが吹っ飛んだ。その瞬間に俺はメビウスを蹴りつけ、距離をとる。とりあえずは、イニシエンと共に撃退……
「
「なんだと!」
メビウスはエンシェントの能力を使用して、光線でイニシエンを撃ち抜いた!? 何故、それを使えるんだ。そして、力の暴走を受けたイニシエンは苦しんでいる。イニシエンでさえも、そんなに簡単に
「俺がこの程度で!」
「ククッ、予めこの世界に抵抗力を弱化させる結界を張っていた。そして、私がエンシェントの力を使える原因だが」
「管理者の力は、元々は一つだ。それを分割してそれぞれの管理者に与えられた。別ける事が出来るんなら繋げる事も出来るはずだ。けどな、その力は管理者に強く結びついている。それを奪ったということは」
「クハハ! あれほど弱化してしまえば。エンシェントと言えども、倒すのは簡単だ! そもそも、エンシェントを閉じ込めていた結界は私のものだ。後は好きなように出来る」
エンシェントを封印するように言ったのは、自らエンシェントを倒し、その力を自分のものにするためなのか。そして、この場所に出てきたということは
「次は俺って事かよ」
「メビウスの作戦に穴なんてあるわけ無いじゃん。バッカみたーい」
立ち上がったレアルが、再度イニシエンを囲む。そもそもの力の保有量が多いと思われるイニシエン。力の暴走を受けているのは致命的だ。
「そして、貴様には動かないで貰おう。
メビウスの呼び出した鎖が俺に迫ってくる。回避しようとするが、どこまでも追尾してくる。〈アンマグネクス〉で切り捨てようとするが、鎖に触れた瞬間、その場から動かせなくなる。
「アハハハ! ホラホラー? 抵抗してみなよー」
イニシエンはレアルに囲まれ、銃弾を受け続けている。多勢に無勢、何とか防いではいるが物量に押されて反撃が出来ないようだ。マズイ、どうしたらいい!
「おい、ヌル。お前はこの世界の破壊を望んではいないんだろ」
「あぁ、もちろんだ」
「そうか、それなら。お前に全てを託す」
「何を……?」
イニシエンは腕を大きく振り上げる、大技でも繰り出すのか。だが、レアルの攻撃は待ってはくれない。そんなに大振りしては、攻撃後の守りが!
「とうとう血迷ったのかアンタ! 拙作だ、蜂の巣にしてやるよ!」
「王は民の道であるべきだ! 後の事は任せたぞ。
そして、拳を振り下ろすと。〈アンマグネクス〉に巻き付いていた鎖が砕け、俺の足元が砕けた。動けないまま俺はそのまま落下していく。そして、最後にみたものは、レアルによって撃ち抜かれるイニシエンの姿だった。
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