力を得た事
アイムが目覚め〈ゲート〉を使用して移動した先は世界〈ノズィンダ〉雨が降り、時折雷鳴の響く、枯れ木ばかりの荒れた世界だ。アイムの話によるとここにイニシエンの関係者が居るはずだが。
「間違いないのか?」
「間違いないですわ。ここに邪悪の関係者が居るはずですわよ」
「ずいぶんアバウトだな」
「精度が良くないのは仕方ないのですわ。エンシェント様が封じられてしまっていますもの」
邪悪の関係者ということは、イニシエンとは限らないということか。まぁ、邪悪の関係者なのだから居場所を聞けばいいだけの話だ。
リアは着いて来なかった。何か別の用事があるとか言っていたな。イマイチよくわからない奴だったが、俺を中立の管理者に会わせたいようだった。神聖が破壊者を望むように、中立も何かを望んでいるのだろうか、その辺は会わないことには考えようが無い。
「方向はこっちで合っているのか」
「間違いありませんわ。この世界は水が多いですもの」
アイムの指示通りに動いて、邪悪の関係者を探している。雨で視界が悪い中、枯れ木の森を進んでいくと、前方に人影が……。あの人影は、もしかして。
「あらー、あの時は酷い目にあったわよぉー。あ、でもなんか意識失ってたみたいだからわからないのかしら?」
「なんの話だ」
意識を失っていた? リアによって眠らされていた間に何かあったのだろうか。いや、そんなことよりも聞かないといけないことがある。
「まぁ、気にしなくていいわよー。ちょうど探しにいこうと思ってた所だからタイミング良いわねー」
「俺も用事がある」
「あらー? そうなの? でもー、そんなことよりも私はイニシエン様の為に貴方を捕まえたいのよー」
「俺はイニシエンに聞きたいことがあるんだ」
「それは私達の仲間になるということかしらー?」
「それはありえないな」
「交渉決裂ね。私には目的を達成する為に何でもする覚悟があるわ。貴方はどうかしらー?」
エメレイアは殴りかかってくる。だが、そんな単調な攻撃は当たらない。パワーは明らかに向こうの方が上だろう。しかし、その他の速度や条件反射といったものはそこまでの差が無いように思える。だとすれば、回避に徹していれば当たるはずもない。
「覚悟か。覚悟と言って良いものなのかはわからないな」
「ふーん。それにしても、意外と強いのねぇー? それとも、避ける事しか出来ないのかしらー?」
「どうだろうな」
隙を見て〈アンマグネクス〉を呼び出し、エメレイアからの追撃を受け流す。何故俺がここまで戦えるようになっているのか。それは、俺が記憶の集合体として完成したからだ。その、記憶の元となった存在の良い所を寄せ集める事によって、例え相手が悪魔だとしても戦えるレベルにはなっている筈だ。
「そろそろ、本気で行くわよー。唸って揺れて飲み込め!
大きな地震が起きる。下手に動く訳にはいかないが、エメレイアが急接近してくる。この状態では受け流す事は出来ないが。
「境界を創る剣士は、攻撃する事よりも。守ることを選んだ。
〈アンマグネクス〉の所有者の能力によって、俺の周囲に境界を創る。これであらゆる干渉を受けない、もちろん境界を作り出している間はこちらからも影響を与えることは出来ない。とりあえずは地震が収まるまで凌ぐか。
「そんな事まで出来たのねー」
「命を偽る錬金術師は、仲間を望んだ。
エメレイアの攻撃が止んだ瞬間。境界を解除し〈氷結の弓〉の所有者の能力によって、アイストーンをエメレイアの頭上に召還する。そのまま落下して押しつぶす……。訳が無いか、錬金能力に比べ発動が早いとは言え、相手は人外なのだから。エメレイアはアイストーンの下から脱し、一直線に近づいてきた。ここまで近寄られては、境界を創っても意味が無い。
「食らいなさい!
「風の魔法使いは、創られた時に力を得ていた。
俺に向って打撃を放つエメレイアに向って、〈ウインドロッド〉の所有者の能力によって迎え撃つ。その力は、光を放つだけだが。その光に触れたものを全て消滅させる。
「えっ……!?」
俺は目の前に消滅の光を呼び出した。そんなものを気にせず右の拳で打ち込もうとしたエメレイア。その結果は、自ら右腕を消滅の光の中へと突っ込み、その腕を消し去ってしまう。
「火の魔法使いは、異世界から召還されたときに力を得た。
エメレイアが動揺しているうちに、〈ハンドロッド〉の所有者の能力によって、俺の腕を炎と化して。その腕でエメレイアを捕まえる。
「まだなのよ……。負けるわけには」
「重力の剣士は、託すことにした。
そして、ジダイガに渡された武器〈ブレイクソード〉の所有者の能力によって。触れているもの、つまりはエメレイアの重力による影響を操作する。身体が重くなり、身動きも出来なくなっている筈だ。
「そこまでにしてくれませんか。貴方の覚悟は見させて頂きました。次は、わたくしの覚悟をみていただきます。よろしいですね?」
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