祈りの対象
「こうなったら、僕がこの天使抑えておくから。ヌル君はイニシエンを探しに行きなよ」
「そうさせてもらう。アイム、イニシエンはどこに居る?」
「ちょっと待ってもらえます? 今から探知しますわ」
アイムは俺の肩にまでよじ登る。手の上に居られるよりは行動しやすくて良いが、早めに探知してくれると助かるな。
「いえ、決めました。貴方達2人ともここで鎮圧します。メビウス様の指令と、私の意義を、両方とも達成しようと思います。
沢山のオールグローリアの人形が部屋になだれ込んでくる。とりあえず〈アンマグネクス〉を呼び出して構える。大丈夫だ、本来のこの力の使い方も理解した。リアには感謝しなくてはいけないな。
「解ってると思うけど、あれはただの人形だから、人形を操っているものを壊した方が良いからね。
「解っている。くらえ!」
人形達は俺とリアを取り囲もうとする。リアは障壁で身を守り、俺は飛びあがり、剣を回転させ薙ぎ払い、周囲の人形を操っている木製の棒を砕く。
「ちょっと! あまり動かれると集中できませんわ!」
「なんとかしてくれ」
振り落とされないようにしがみつくアイム。だが、あまり余裕を見せていられない。今の所は大したこと無いが、操られる訳にはいかないのだから。
「神に従え、神に祈れ。
「ヌル君! その場から離脱して!」
リアの声にその場からバックステップで離脱すると、今まで俺がいた場所の上空の空間に、穴のようなものが現れてそこから2本の腕が出てきて、指先から糸を発射した。あのまま動かなければその糸にとらわれていたのかも知れない。しかし、もしかしたらあの腕が天使の本体なのか。やってみる価値はある。
「
魔法を発動する。〈ウインドロッド〉を呼び出す必要なんてない。これは記憶の欠片で、もはや自分の一部なのだから。しかし、まだ動ける人形に阻まれて、風の刃は上空の腕に届かず、腕は空間の穴に引っ込んで消えてしまった。
「気づいたみたいだね。オールグローリアの本体はあの腕だよ。僕はちょっと攻撃に転じる事が出来ないから、どうにかしてくれるかな? 防御性能は高いからこっちの心配はしなくてもいいからね」
たしかに、人形達はリアの障壁に近づけないようだ。何とか、一撃を加えたいが、このままでは人形たちに邪魔されてしまうな。先に潰しておこう。
「
竜巻で人形の糸を切っていく。糸の切られた人形はバタバタと倒れていくが、上空に浮いている棒に向かって人形の糸が伸び、繋がって再度動き始めている。あの操っているものを壊さなければいけないか。
「
その場から回避すると同時に飛び上がる、そして、空間の穴が現れてそこから腕が出てきた瞬間。〈アンマグネクス〉を突き出し、腕を傷つける。
「何故、ですか。何故苦難に立ち向かおうとするのですか。その先に、何もなかったとしても。それでも、進めるというのですか!」
「そんなことは知らない。ただ、真実を知りたいだけだ。
本体を守るために、集まってきた人形に火球を放ち、焼いていく。根本から動けなくしてしまえばいい。
「それでも、こんな苦難を与えたくないのです! この世界は、全ての人間に希望を与えるために作られた箱舟、全人類の希望を、祈りを! 原動力に動く機構なのですから! 〈零の映写機希構〉が絶望を与えるものであって欲しくないのです!」
「それでも、止まったりはしない」
「わかって欲しいのです……。私は祈りと、信仰によって平穏と安息を与える存在なのに、祈りは盲目に、信仰は洗脳になってしまっている。私が望んでいた姿ではない……。せめて、希望であって欲しいのです、絶望なんて見せたくないのです。お願いします、現実を見ないでください!
部屋中に空間の穴が現れて、そこから糸が飛び出し部屋のいたる所に繋がってしまう。不味い、嫌な予感がする。地を蹴ってオールグローリアに〈アンマグネクス〉を向ける。
「これで最後にしてやる」
「はい、これで終わりです」
糸が繋がってしまった家具などが動き出して、四方から俺に向かってくる。間に合わない……!
「僕のことを忘れてないかな?
家具たちの動きが止まった。チャンスだ。慌てて引っ込もうとしてるみたいだが、もう遅い。〈アンマグネクス〉を腕に深く突き刺し、地に落下しながら切り裂く。血を流しながらも、腕は空間の穴に引っ込んでいく。仕留めきれなかったか
「まだ、諦めません。私は、全てを救う天使なのですから」
それからオールグローリアの声が聞こえることは無かった。何とか撃退したか、だが、色々と知っていそうだったな。情報を得られなかったのは残念だが、そもそも教えてれる事はなかっただろうな。
「とりあえず、イニシエンの場所を急いで探すとするか。アイム?」
そういえば、アイムの反応は無い。肩に重みは感じるから振り落としたりはしてないと思うのだが。
「あちゃー、アイムは目を回してるよ」
……。アイムが落ち着いたら探知してもらうか
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