真実と帰還願望
思い出したんだ。自分は、俺達は。帰りたかったんだ。
俺達は〈外部〉のテスターだったんだ。試験的にこの世界に訪れた訪問者だった。だが、帰る方法が解らなかった? 帰れなかったのか? 世界が生まれ変わる度に〈外部〉としての存在が薄れていった〈外部〉としての記憶が薄れていった。その中で、強く〈外部〉としての存在を保っていたのが、おそらくプロキアなのだろう。
そして、世界は滅びたけれど、心の奥底に残っていた。帰りたいという、感情が俺という人格を組み上げた。正確に言えば〈零の映写機希構〉がダメージを受けたことによって〈零の映写機希構〉によって押さえ込まれてしまっていた〈外部〉としての影響力を持つことが出来たんだろう。そうか、プロキアが破壊者になるために〈零の映写機希構〉の定めるルールから外れる必要があったのは、ダメージを与えて〈外部〉としての影響力を取り戻す必要があったのだろう。
そこまで考察して、そもそも〈零の映写機希構〉とはなんだろうか。世界のルールに縛られず、破壊者になりうる〈外部〉の存在を押さえ込もうとしていたようだから、世界を保持しようとする機関ではあるようだ。この世界の核のようなものなのだから、おかしいことは何も無い。だが〈外部〉の存在によって作られたものならば、それは、何の為に?
〈外部〉によって造られた物ならば〈外部〉によって破壊できるのも道理。だが〈零の映写機希構〉自体は〈外部〉相手にも対抗しようとしている。そもそも〈外部〉による干渉が途中で完全に止まっているというのもおかしい。目的があって造ったはずなのだから。全く干渉しないというのはおかしいことなんだ。まだ、何か情報が足りないのか? 中立の管理者に会わないといけないな。
「そろそろ起きなよー」
声がする。この声はあの狐の仮面の……!?
「お前は誰なんだ!」
目を開けると、多分〈ユアタウ〉の家の中。床に寝かされていて、あの狐仮面の奴が上から覗き込んでいる。確か、リアとか名乗っていたはずだ。このまま寝てても身体が痛くなりそうだ。立ち上がろう。
「僕はリアだって言ったでしょ? それとも、こう言った方が良いかな? 僕は中立の従者で代理人のリアだよ」
まさか中立関係か。いや、中立はこの世界と〈外部〉の門番的な存在とも聞いている。そうなれば、ある意味〈外部〉である俺の事を知っていてもおかしくは無い。
「それなら、聞きたいことがある」
「それは中立の管理者、フォルフルゴートに聞いてよ。僕には答えられないよ。僕はね、君の答えが聞きたいだけなんだ」
「それなら、連れて行け」
「そうしたいんだけど、君はもっとこの世界について知らないといけないよ。そうじゃないと、ちゃんとした答えが出せないと思うんだ。というのもあるけど、ある存在が中立の世界への入り口を封印しちゃって、会いに行けないんだよ。僕でさえも移動に骨が折れるくらいだから、君には行けないね」
俺が中立の管理者に会うことを妨害する存在が居るのか。混沌と神聖は確かに疑わしいが、正直な話一番可能性として高そうなのが邪悪だ。ロジクマスは俺が中立の管理者に会いたがっていることを知っている。そして、仲間に引き込むためにこのことを交渉に持ってくる可能性を考えなくてはいけない。
「中立の管理者が自らここまで来ることは出来ないのか」
「出来るけど、フォルフルゴートは動かないよ。引きこもりみたいな感じかな?」
そういえば、レアルが中立のダメ竜とか言っていたような気がする。だからダメなのか、いや、この言葉が本当なら中立の管理者は竜なのか。どちらにしても、今のところ道は中立の管理者に会うしかない。何とか方法を考えなければ。
「どうすれば良いんだ」
「それなら簡単だよ。封印している術者を倒してしまえば良いんだ。封印さえ解かれれば、中立の世界に行くのを阻むものは無いからね」
それが妥当か、だが、術者がわからない。イニシエンはなんとなくイメージとは違う。ロジクマスなら出来そうな気もするな、犯人はロジクマスか? 交渉でどうにかしたいと考えていたようだし、怪しいな。
「ロジクマスが一番怪しいな」
「うん? 封印したのはロジクマスじゃないよ」
「何故解る」
とりあえず思い浮かぶのはこれくらいだ。他に動機は思い浮かばないし、他にヒントも無さそうだ。リアは何か知っているのだろうか
「だって、中立の世界を取り囲むように封印するなんて、従者程度に出来るわけ無いもの、それに」
「それに?」
「この力は。メビウスのものだからね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます