悪魔となった人
エンシェントの居る世界まで飛んできたけど、相変わらず落ち着く世界だね。中立の管理者の部屋なんて何にも無くて退屈なんだもの。そういえば、ヌルはまだ目覚めないのかな、想像以上に時間かかってるね。まぁ、良いけど。抱えて運ぶのって意外と大変だよ。
「エンシェントの状態はどうかな?」
エンシェントの近くに寄ると、その状態がよく解った。エンシェントの周囲に張られた結界は空間をループさせることで周囲に干渉できなくなっている。そして、杭を基盤に無限の隙間を発生させて力を流し込ませて、エンシェントの力を貯めないようにしているみたいだね。なるほど、こんなこと出来るのは……。やっぱりねぇ、そうだと思ったよ。
「こんな所に何のようかしらー」
「それは僕のセリフなんだけど」
空間が避けて、そこから出てきたのは女性の悪魔。うーん、女性って事は元人間だね。イニシエンの力を割いて作成された真なる悪魔は皆男性タイプだからね。まぁ、その辺は元になったイニシエンが男性タイプだったから仕方ないね。
「まぁ、貴方が誰でもいいけどー。さっさとその人間を渡して欲しいのよー」
「あれれ? 確かイニシエンは穏便に進めたがってたような気がしたけど? ヌルを仲間にする為にあまり無理やりな事はしないと思ってたんだけどなぁ」
「私はね、ロジクマスがのろのろやってるのにイライラしてるのよー。その人間を持っていけばイニシエン様は喜ぶ筈なのに、行動しないってどういう事なのか解らないわー」
あー、イニシエンは案外部下に甘いからねぇ。秩序みたいに厳格でもないし、神聖みたいに絶対でも無いから、バラつきが出るのは仕方ないけど、もっとしっかり統率したらどうなのかな? まぁ、統率されてない訳では無いし、イニシエンに統率力が無い訳では無いんだけどね、いつも何かしら抜けてるんだよね、あの魔王は。
「イニシエンを慕ってるんだね」
「当たり前よー。イニシエン様は私に道を示してくれたもの。だから、私達はイニシエン様の道に全力でついて行くのよー」
自分の認めたものしか受け入れない邪悪は、部下さえも仕える人を選ぶんだ。だからこそ、イニシエンは慕われてるんだけどね。まぁ、僕には関係ない話だけど。
「君の気持ちは解ったよ。だけどね、現状でヌル君を君に渡すわけにはいかないんだ。だって、ヌル君の事を一番解っているのは中立側だからね」
「関係ないわよ。そんな事。私達は自分達の納得したことしか眼中に無いのよ? つまり、妥協なんて言葉は存在しないの。あなたが誰だか知らないけど、邪魔をするなら打ち倒すだけよー」
「出来ると思うのかい? 天上に手を伸ばしても地を這う生き物には一生届かないだろうね。それでも望むのかい? 憤る人間様?」
目の前の悪魔からはさっきまでの余裕そうな表情が消えていく。そうだね、感情に任せて向ってきたら良いよ。その全てを拒絶してあげるよ。その役割は中立の管理者がやるべきなんだけど、その代理として僕が消してあげるよ。
「うるさいわねぇ! 何様のつもりよ。
「そうだね。神様とでも言っておこうかな?
悪魔は殴りかかってきたけど、僕は障壁で身を守る。この障壁はあるべきものはあるべき姿にする。だから、この悪魔の能力は打ち消されている筈なんだけど、素の殴る力が強すぎるのか、障壁が軋んでる。流石戦闘能力に特化した悪魔だね。
「神様なんて知らないわ。打ち抜け!
「うわー、マジで?」
拳技としての威力は全部消えてるはずなのに、拳で障壁を割ったよこの悪魔。やっぱり僕の能力は素の力が高い存在には効き難いなぁ。
「
拳が迫ってきたから、右手で受け止める。うん、僕の身体って物凄い丈夫なはずなのに、骨が軋んでるよ。本当に元人間なのかな、正気を疑うよ。いろんな意味で。
「まぁ、やられっぱなしってのは流石に頭にくるからね。そろそろ反撃してもいいと思うんだ」
銃で撃ちぬかれたときのイライラもここで発散しておこうかな。と言う訳で、僕の武器を取り出そうと思うんだけど……。もしかして武器を出そうとするのがフラグだったりするの?
「メンドクセェ。エメレイア、退きやがれ」
「なによー。グネデア邪魔しないで欲しいわぁー」
「コイツはお前が勝てる相手じゃない、さっさと退きやがれ」
「嫌よぉー」
「メンドクセェなぁ!」
グネデアは、エメレイアとかいうあの悪魔を掴むとどっかに投げた。叫び声が聞こえるけど、あれだけ肉体派なら、多分無事だと思う。さて、今の内にヌル君を草むらの中に寝かせておこう。
「久しぶりだね、グネデア君」
「俺が代わりに相手してやるよ。メンドクセェけど」
「相変わらずだね。まぁ、だから7人の内君だけが生き残ったんだろうけどね。怠惰の悪魔君?」
「ウルセェなぁ、白竜リア・メキア」
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