原子炉の脅威
とりあえず、マスクを造る為の布の捜索を再開することにする。いまの所考えられるのはそれくらいだからだ。しかし、探せど探せどいい感じの布は見つからない。糸は見つけたのだが、流石にこれを布にするには無理がある。
「この家が最後か」
最後の家の扉を開こうとしたら、なにやら物音がした。嫌な予感がする、だが、このまま固まっていてもなにも変わらない。覚悟を決めてとびらを開くと、その家の中をあら捜ししていた、おそらく物音の元凶の人物と目が合ってしまった。何故、こんな所に居るんだか、というかこんな所で何をやっているのか……。原子炉のアトムビジョン。
「やっと見つけたぞ! どこに隠れてやがった!」
「隠れて無いし、そんなところには隠れられないし」
家の中にあった木箱がひっくりかえって中身が散らばっている。自分の身体よりも小さい木箱だ、隠れられるわけが無いだろう。
「ハッ! 知ったことか! そんな事よりも、私と戦いな」
「嫌だ」
「チッ! 何でだよ」
「理由が無い」
確かにアトムビジョンは混沌の従者ではある、レアルに従順以前に反抗的。そうなると本当に単純に戦う理由が無いのだ。自分は戦闘狂ではない。
「ハッ! 私は戦う為に造られたんだ、戦闘目的に造られたんだよ。それなら戦わないといけないだろ。戦わない戦い用の道具にどんな価値があるんだよ」
「戦いだけが全てじゃないだろ」
「ハッ! 機械は作られた理由が全てなんだよ。綺麗事言いやがって気にくわねぇな!」
怒りをあらわにするアトムビジョン。使われる者としての縛りが原因なのか、個人的に何かあるのか。そんな事は解らないが、自分は地雷を踏み抜いたらしい。
「ハッ! どうせ雑なんだよ! 自ら立てた質量保存の法則を自ら壊すような、矛盾を内包した科学はな! 見た目が綺麗なだけで、中身は乱雑に回線が詰まってるんだよ!」
アトムビジョンは銃口となっている左腕をこちらに向けてきた。銃の延長線上に立たないように移動しながら〈氷結の弓〉を呼び出す。先ずは様子見をしよう。
「焼き尽くせ!
アトムビジョンの左腕から、熱線が放たれた。当たらないように移動していたので、直撃はしていないが、それでも凄い熱量だ。熱線を直に受けた地面は、焼けるどころか溶けている。これは直撃しなくても、掠っただけでやばいことになる。
「
あの熱線はかなり遠くまで届いている。だが、この熱線発射までそこそこのタイムラグがあった、そのために避けられた訳だが、そうなると近距離が苦手なのだろうか。だが、万が一あの威力の攻撃が、近距離の場合タイムラグ無しなんて事になったら、その時点で終わりだ。アトムビジョンの動きを知る為に、氷の蛇を4体向わせる。
「チッ! しゃらくさい!
アトムビジョンが爆発して、蛇を全て消し飛ばした。ついでに小さなクレーターみたいになってる、明らかにオーバーキルだ。近寄らなくて良かった。あの爆発攻撃もタイムラグはあったが、距離次第では逃げ切れない。因みに、爆発したアトムビジョンは全くの無傷だ。耐性があるのか、自分の技だからなのかはわからないが。
「どうしようか」
アトムビジョンの攻撃は、鈍いが一撃必殺。しかもかなり広範囲なのだ。1撃も受ける訳にいかない。何とか逃げる方法を。
「ハッ! 来いよ、ドンドン来いよ!
アトムビジョンは地面に左腕を向けると、地面が爆発して、色々なものが飛び散った。自分にとっては散弾みたいなものだ。〈ウインドロッド〉を呼び出す。
「
竜巻に身を隠して飛び散ったものから身を守る。何とか攻めに転じて、不意うって逃げたいんだが。
「今だ!
自分を包んでいた竜巻が消えた瞬間。目の前に見えたのは左腕を向けたアトムビジョンで、既に熱線が発射された後だった。マズイ、タイムラグがあるからといって、目を逸らしていたらそんな事関係が無いレベルだ。油断した、流石に避けられない……!
「タイミングぴったりかな?
突如現れたフードを被り、狐の仮面を付けた少年? は熱線のほうに腕を向け。障壁のようなものを創り出し、アトムビジョンの攻撃を弾いてしまった。
「誰だ?」
「僕の名前は、そうだねぇ。リアとでも呼んでよ」
「何しに来たんだ」
どうやら笑っているようだ。いや、仮面を付けているから何となくなのだが。しかし、一体何が目的なのか。そして、この攻撃を防ぐとは何者なのか。
「君に思い出してもらおうと思ってね。それによって時代がどう動くのか解らないけれど。僕は期待してるんだ。頑張ってね。
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