複製の機械

「とりあえず、かかってきなさい」


 イフペーストは光る円盤、多分CDを持っているだけで、何もしてこない。カウンター系能力だろうか、様子を見る為に遠距離から攻撃してみよう。〈ハンドロッド〉を呼び出すが、今回はいきなり大きな攻撃はしない。返されたら大変な事になる。


「とりあえず。魔法せんげん[フレイム]」


 小さな火球を発射する。これなら跳ね返えされても多少の火傷で済むはずだ。イフペーストはCDを火球に向けると、CDの中に吸い込んだ。やっぱり反射系か?


「私の複製機としての力を見せてあげるわ。混沌せんげん[悪性劣化乱造CD-R]」


 イフペーストの持つ円盤が分身するかのように増えていく。これはもしかして、フェイクライフの時と同じようなパターンか。そうなると早めに壊しておくべきか。〈ウインドロッド〉を呼び出す。


魔法せんげん[ウインドブレード]」


 イフペーストの持っている円盤めがけて風の刃を発射する。吸収されてしまったら今度は氷の矢を使ってみよう。


「まぁ、警戒するのはわかるわ。でも、これはこう使うのよ。混沌せんげん[悪性劣化乱造魔法]」


 イフペーストのCDが全て砕け、代わりに沢山の火球がこっちに向ってきた、風の刃も火球の数によって打ち消された。


魔法せんげん[ウインドフォーム]」


 とはいえ、この火球は自分の放った火球よりも小さい。威力はそこまで無さそうだ。竜巻で火球を全て弾く。イフペーストの能力は相手の能力を吸収して、増やして攻撃するというものなのだろう。グネデアと違い、接近戦が強いというわけでは無さそうだ。〈アンマグネクス〉を呼び出して一気に接近する。


「まぁ、そうなるわよね。混沌せんげん[悪性劣化乱造CD-R]」


 イフペーストの持っているCDが増えていく、だが、あの程度の火球なら受けても大きなダメージにならない。〈アンマグネクス〉を振り上げる。


「これはどうかしら。混沌せんげん[悪性劣化乱造ミサイル]」


 イフペーストがCDを一枚投げると、それが砕けミサイルが現れた。真っ直ぐこっちに向ってきている、振り上げた〈アンマグネクス〉をミサイルに向って振り下ろす。ミサイルは真っ二つになって直撃を回避できた。危なかったな。


「ねぇ、これがどういうことかわかるかしら?」


 イフペーストはそう言うと、持っていた十数枚ものCDを全て放り投げた。まさか、これ全てがミサイルになるという事なのか。こんなに沢山のミサイルを対処出来るわけが無い。


魔法せんげん[ウインドフォーム]」


混沌せんげん[悪性劣化乱造ミサイル]」


 咄嗟に〈ウインドロッド〉を呼び出して竜巻で身を守る。直撃だけでも何とか避けなければ。イフペーストのCDが砕け沢山のミサイルが向ってくる。何とか直撃は防げたが、ミサイルは直撃しなかっただけで竜巻によって逸れた先で着弾し、爆発の衝撃や飛んできた欠片等によって、無傷とは言えない。接近戦なら対処できると思っていたが、これではダメだ。近寄る前に攻撃される。何とか爆発に紛れて木の影に隠れたが、見逃してくれないだろうか。


「次行くわよ。混沌せんげん[悪性劣化乱造CD-R]」


 イフペーストは見逃してくれる気は無いようだ。手に持っているCDは徐々に増えている。〈氷結の弓〉を呼び出して、何とか気を逸らせないだろうか。


錬金せんげん[クアトロアイスネーク]」


 こちらの位置がわからないように上空に向って矢を放つ。空で氷の蛇となって降り、上からイフペーストに襲い掛かってもらう。


「じゃあ、私はこうしようかな。混沌せんげん[悪性劣化乱造ミサイル]」


 イフペーストは作成したCDを上空に向って放り投げると、砕けてミサイルの雨となる。そんなめちゃくちゃな。あのミサイルが着弾する前に距離をとりたい、這いつくばって出来るだけ見つからないように距離をとる。そして、後ろで爆音と衝撃が、自分の攻撃にまきこまれてくれれば助かるが。


「これでちょっとは見通しが良くなったわね」


 流石に自爆はしてくれないか、困ったな。これといった弱点が見当たらない、対処法が思い浮かばない。精霊の時は、明確な弱点があったというのもあるが、仲間が居たという事が大きいと思う。どうすればこの状況を乗り切れる。


「そうね。ここら一帯の邪魔な物を吹き飛ばせば言いだけの話だわ。混沌せんげん[悪性劣化乱造CD-R]」


 絶体絶命のピンチ。ここら一帯を吹き飛ばされてしまえば、見つかる以前に命の危機だ。とはいえ、何か行動したところで見つかってしまえば意味が無い。気づかれない位置まで頑張って移動しようにも、立ち上がってしまえば見つかる、伏せたまま這っていれば逃げ遅れる。詰みなのか……!


「ククッ、イフペースト。ここは私に任せてもらう。レアルの所へ戻れ」


 急に何か聞いたことのある声、これは……。


「……。解ったわ」


「さて、情報の共有をしようじゃないか。そこに居るんだろう? ヌル」


 ジダイガだ。あれから姿を見せなかったというのに、急にどうしたのか。少なくとも、信用できる相手ではない。


「ククッ、警戒しているのか。安心しろ、イフペーストには帰ってもらった。それとも、私が信用できないのか? もう、解っている筈だ、私は神聖側である事、そして嘘をつけない事。言っているだろう、情報交換をしようと」


 仕方が無い。このままでは状況は好転しない。せめて情報だけでも貰うとしよう。体中痛むが立ち上がる。


「ようやくその気になってくれたか。ククッ、安心しろ。私は情報交換をするだけだ」 

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