怠惰の悪魔
下手にこの悪魔、グネデアに近づくのは危険だ。フェイクライフを吹っ飛ばしたあの威力を見ると、一撃でもくらったら大怪我は免れない。〈ウインドロッド〉を呼び出して遠距離攻撃に徹しよう。
「
「効かねぇよ」
魔法で風の刃を発射するが、腕の一振りで打ち消される。これは酷いな。幸いにもグネデアはそこまで移動スピードが速くない、距離をとりながら今度は〈ハンドロッド〉を呼び出す。
「
巨大な火球を発生させ、グネデアに向けて発射する。風の刃とは違いかなりの威力がありそうだ。少しでも怯ませて、逃げる時間を確保したいところだ。
「ちょろちょろと、メンドクセェ!」
グネデアは飛んできた火球を殴りつけると、そのまま帰ってきた。こんなの出鱈目だ。
「
慌てて風の竜巻で身を包み火球を逸らす。爆音が響く、この威力の技を直撃したら火傷ではすまなかったな……。
「くらえ」
「何!」
グネデアが接近してきていて、腕を振り上げていた。急いで〈アンマグネクス〉を呼び出してそのまま振り下ろす。何でも切る剣ならば流石にこの悪魔でも。
「あー、アブネェナァ」
〈アンマグネクス〉を白刃取りで受け止められた。グネデアの力が強すぎてそのまま振り下ろす事が出来ない。指輪に戻して距離をとり、今度は〈氷結の弓〉を呼び出す。
「
矢を放ち四体の氷の蛇を呼び出す。少しでも時間を稼いでくれ。
「ウゼェんだよ」
グネデアは一体ずつ殴って蛇を破壊している。その間にグネデアの周囲に氷の矢を放ち地面を凍らせておく、成功すれば逃げられる筈だ。
「メンドクセェ、小細工なんて意味ねぇよ」
「今だ。
グネデアが凍った床を気にせずそのまま近づいて来る。〈ハンドロッド〉を再度呼び出して、魔法で小さな火の玉をグネデアの足元に発射する。
「何を、うおっ!?」
小さな火の玉によって表面が解けた氷はよく滑る。グネデアはそのまま転んでしまった。よし、計画通りだ。立ち上がろうとしているが、なかなか立ち上がれないようだ。
「メンドクセェんだよ!」
苛立ったグネデアが地面を殴ると地面が揺れ、床の氷は砕けて飛び散った。まさかこんな方法で、だが〈氷結の弓〉を呼び出して。立ち上がる前に。
「
氷の矢をグネデアに向って放つ。その矢に向って飛び散った氷が集まり、グネデアを巻き込み大きな氷の塊となった。流石に氷の中に閉じ込められてしまえば簡単に出ることは出来ないだろう。だが、既に氷にひび割れが出来てきている。急いで逃げよう。
「ゲート起動〈ロウティバ〉」
急いで扉を呼び出し逃げ込む。おそらく氷の中に居るグネデアには自分の声が聞こえないだろう、行き先がわからない筈だ。扉の先には森が広がっていた。
「そういえば、この世界はまともに探索していないな」
精霊に襲われてそれどころでは無かった。もしかしたらここにも記憶の断片があるのかも知れないのだから、探してみる価値はあるはずだ。
そう思って森の中を歩き回っていたのだが……。どこが通った道なのか、どこが通っていない道なのか、全く解らない。幸いにも世界を移動すれば遭難は防げるのだが。
「疲れてきたな」
このまま彷徨っても何も進展が無いかもしれない。仕方が無い違う場所に……。何か物音がする、誰か居るのだろうか、見つからないように音を立てず木陰でじっとしているが、物音は明らかに近寄ってきている。もう見つかっているのか。
「そこに居るのはわかっているのよ。意味無いから早く出てきなさい」
「そうだな」
見つかっているのに隠れても無駄だ。木陰から出ると、ズボンにTシャツの見た目は普通の女性が居た。強いて言えば髪色がピンクかかってるのがちょっと変わっている点だろうか。
「私は複製機のイフペースト。まぁ、よろしくでいいのかしら?」
「聞かれても困る。何故ここに居ることがわかった」
複製機イフペーストはレアルの従者だったはずだ。レアルと居るのであれば、ここに来れた理由なんて一つしか思い浮かばないが。
「多分察してると思うけど、メビウスのおかげね。エンシェント程の掌握能力は無いらしいけど、結構な広範囲らしいわ」
やっぱりか。レアルは最初からメビウスと組んでいて自分を見つけたのもその掌握能力によるものだろうな。だが、未だに理由がわからない。何故、自分に接触したのか。
「レアルやメビウスの目的はなんだ」
「そんなの解らないわ。とりあえず、私の目的は会って見たかっただけ」
「それなら、もう帰ってもらえると助かる」
「そんな簡単にいくと思うの?」
「思いたいな」
グネデアから逃げて、森の中を探索して、そこそこ疲れている。そんな状態で対処の仕方もわからない相手と戦いたくない。解ったとしても、戦いたいとは思わないが。
「貴方がどれぐらい強いのか試してあげるわよ。私はそこまで強い方ではないけれど、油断をしたらどうなるかは知らないわ」
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