精霊との決戦

「負ける訳にはいかない。錬金せんげん[クアトロアイスネーク]」


「この程度ですか? 魔法せんげん[ウインドブレード]」


 〈氷結の弓〉を取り出し一気に四本の矢を放ち、それぞれ氷の蛇にするが、フロウはそんなものを無視して風の刃を放ってくる。


「ギヒャヒャ! 俺も居るんだぜ。魔法せんげん[ホリズド]」


錬金せんげん[クアトロアイスバッド]」


 グリアが風の刃を吸収し、攻撃を防ぐ。そのうちに更に矢を4本放ち氷の蝙蝠にする。この氷の生き物達にフロウを取り囲ませるが、精々動きの邪魔をする程度だ。


「邪魔ですね、魔法せんげん[タイフーン・ハウト]」


 沢山の風の刃によって氷の生物は粉砕されるがここまでは予想通り。こんなに早く砕かれるとは思っていなかったけれど。


錬金せんげん[クアトロアイストーン]」


 フロウの四方に矢を放ち、その矢は周囲の粉砕された氷を吸収して、大きな氷の壁となり、フロウを閉じ込める。このまま〈アンマグネクス〉で斬りこめば。


魔法せんげん[タイフーン・ハウト]」


 フロウの一撃で四方に展開した壁を粉砕される。早すぎる、攻撃に転じることが出来ない。だが、まだ方法はある。


錬金せんげん[アイストーン]」


 フロウに向って矢を放つ。その矢に向って粉砕された氷が集まり、フロウを氷の中に閉じ込めてしまおうという作戦だ。


「考えましたね。ですが、無意味です。魔法せんげん[ウインドフォーム]」


 フロウは周囲に風を纏うことによって氷の破片を吹き飛ばす。吹き飛ばされた破片は自分とグリアにそのまま襲い掛かってきた。


「マズイな」


 破片に目がやられたらどうしようもない。目を優先的に守る。グリアは収束された攻撃は吸収できるようだが、拡散された攻撃には無力のようだ。


「苦しむことの無い思考の牢獄へ。秩序せんげん[フローブレイン]」


 何かが頭に触れた、目を開くと目の前にはフロウが、そのまま頭の中が真っ白に……。



「ふむ、大丈夫かね?」


 気がつくと、真っ白の空間に、エルフェだけが居た。ここはもしかして、死後の世界とでも言うのだろうか。自分はあの後殺されたのか?


「まだ君は生きているのだよ。時間の問題だがね」


 まだ生きている、それなら何故エルフェが居るんだ。それにここはどこなんだ。全く理解できない。それに時間の問題と言うことは方法があるのか。


「大丈夫なのだよ、エルフェが全部答えるのだからね。エルフェの能力は境目を見る能力と、境目を曖昧にする能力を持っているのだよ。まぁ、キメラになった影響で発現したものなのだがね。この、境目を曖昧にする能力によって、エルフェとエルフェの持っていたナイフの存在の境目というものを曖昧にしていたのだよ。曖昧にされている間に、エルフェの肉体はレアルに殺されて、完全にナイフに移ったという事なのだね。賭けだったが、上手くいってよかったのだよ」


 そのために、わざとレアルに自分を殺させたのか? 完全にナイフに乗り移るために。それがエルフェの計画なのか。


「まぁ、色々と考えはあるのだがね、とりあえずはエルフェは記憶の断片モドキになれたという事なのだよ。そして、一時的に君と同化しているような状態なのだね」


 だからこうして話が出来るという事なのか。だが、この場所はどこなんだ。さっきまでフロウと戦っていたはず。


「この場所はだね、おそらく君の頭の中なのだよ。君は何かの力によって思考を封じられていたようでね、エルフェが何とか正気を取り戻させたのだよ。まぁ、君の肉体の方はまだ影響から抜け出せず、このような状態になったのではないのかね」


 どうやったら元に戻れるんだ。このままではフロウによって殺されてしまうんだろ。何か対策は無いのか?


「エルフェが身代わりになるのだよ。君の代わりにエルフェが影響を受けることで君は解放されるのだよ。解ったかね」


 エルフェは大丈夫なのか。こんなよく解らない影響を受けて。


「問題ないのだよ、術者を倒せば解放されるのでね。まぁ、早めに解放してくれるとエルフェは嬉しいのだよ」


 だが、どうやったらフロウに勝てるのか。〈氷結の弓〉は時間稼ぎにもならなかった。〈アンマグネクス〉は当たらないし〈ウインドロッド〉は論外だ。


「あぁ、それなら。エルフェの能力を使うといいのだよ。今君はエルフェと同化してるようなものなのだからね、問題なく使えるはずなのだよ」


 そうか、エルフェの能力……。そうか、これがフロウの弱点か。解った、エルフェ助けてくれ。


「解ったのだよ。君ならどうにかなると思っているのだよ」


 白い空間が一瞬光ったと思うと、景色が森に戻ってきていた。フロウとグリアが相対しているが、フロウは疲れた様子も無く、グリアが血まみれの傷だらけになって、ボロボロだ。


「流石にヤバイな」


「そろそろ観念しなさい。私の思考の牢獄は自力では解除できません、貴方を倒したらさっさと終わらせますよ」


「そう簡単に俺が死ぬかよ」


「知ってるんですよ。精霊である貴方には魔法は効きませんが、間接的に物理で攻撃すれば良いのだと」


 辺りには木の欠片が飛び散っている。風の力で木を砕いて吹き飛ばしたんだろう。これなら、魔法で物理攻撃が出来る。実体があるものなら、おそらくグリアは吸収できないんだろう。


「ギリギリまで逃げてやるよ」


「無駄な足掻きを……。さて、そろそろ終わらせましょう」


 フロウはこちらに気づいていない。今の内に、エルフェのナイフを取り出す。これで終わりにしよう。

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