反逆する研究者

「そうかい、それじゃ。アンタはアタイの敵って事で良いんだよな」


「そもそも、エルフェはレアルの味方をしていた覚えはないのだよ」


 レアルは黙って銃を取り出し、エルフェに向ける。だが、意外とレアルは余裕そうだ。想定内とでもいうのだろうか。


「始めっからアンタは反抗的だったし、今までも反抗はしてきたからな。アタイとしてはまたかって気分だよ。けどな、戦闘力皆無のアンタがアタイの目の前に来るなんて何を考えてるんだ」


「エルフェは。ディレイスクラップを目覚めさせたのだよ」


「なにっ……!」


「嘘ではないのだよ。今は〈イズンプ〉辺りまで来ている筈なのだよ。空間も強引に突き進んでいるのかね。探知してみればいいのだよ」


 レアルが本気で驚いた声を出した。心なしか青ざめているようにも見える。そのディレイスクラップとはいったいなんなのか。


「レアル・グリードは今まで従者を造っては廃棄を繰り返していたのだよ。そう、文明と犠牲を司る混沌の管理者なのだからね。だが、廃棄された従者達が、レアルへの憎しみや恨みといった共通点を持つことにより一つの存在となった。それがディレイスクラップなのだよ」


 共通点を持つことによって一つの存在になる。それってまさか……!


「くそっ! 原子炉、風力機来い!」


「ハッ! 嫌だね」


「何故でございましょうか。カッコ、爆笑」


「命令だ! 黙って来い!」


 レアルが命令を下したとたん、2人は黙る。機械だから命令には背けないのか。明らかにレアルは余裕が無さそうだ、焦っているように見える。エルフェは自分に向って笑いかける。

 そして、エルフェの頭を何かが貫いた。弾丸だ、レアルが引き金を引いて、エルフェを撃ち抜いた。地に倒れ、赤い液体がドクドクと溢れ出している。見たくない、考えたくない。短い付き合いだったけれど、協力してくれるといった人が、死んだ。完全に即死だ。


「レアル……! お前!」


「うるせぇ! アタイはそれどころじゃねぇんだよ! あぁもう、メビウスに怒られる! さっさとついて来い!」


「おい、待て今さっき!」


 レアルは転移して消えていった。それに付いて行くように2人の姿も消えていく。明らかに、レアルはメビウスと言っていた。一旦ユアタウに戻らなくては。だが、どうやって。

 慌てても仕方ない、エルフェをこのままにするのもかわいそうだ。焼くことは出来ないけれど、せめて地面に埋めてあげよう。と言っても素手で掘ることは出来ない、地面の窪みに入れて、上から葉っぱを被せるだけだけど、これで勘弁して欲しい。


「こんなものか」


 ふと、足元を見ると。エルフェの持っていたナイフを見つける。大切に使わせてもらおう、そう思いナイフを拾うと、ナイフは光を放ち、指輪になった。これは、記憶の断片……。


「オーイ! レアル戻ってきてるか!」


 森の方から慌てたような声、そして現れるグリア。やっと戻ってきたのか。


「何を慌てて」


「フロウの奴が追って来るぜ! 何とか逃げ延びたが、レアルはどこにいったんだよ!」


 フロウが来る。マズイ、状況は絶望的だ。レアルは頼りにならない、と言うよりも寧ろ敵になる可能性のほうが高い。


「レアルはメビウスと繋がってたみたいだ。エルフェが命を賭けて暴いてくれた。だから、現状レアルの手は使えない。グリアは転移出来ないのか」


「俺1人なら問題ない。それに、俺ならなんとか1人位は運ぶ方法があることはある。だけどな、フロウの速度には勝てねぇ。レアルの妨害も今は無いって事だろ、すぐに見つかってオシマイだ」


「ブレスの時みたいにフロウを飲み込むって方法は」


「お前がフロウを弱らせるか、動きを止めてくれたらいける。だけどな、そんな方法あるのか」


 〈氷結の弓〉で動きを止めることが出来るのか。ブレスと違いフロウは風だ。氷の壁で閉じ込めることは出来るのかが心配だ。だけど、それしか方法が無いと言うのなら。やるしかない。


「ようやく見つけました。グリア、何故私達を裏切ったのですか」


「お前等の思考停止は飽きたんだよ」


「……。それでも、私はエンシェント様の為に、あの方の助けとなれるなら、私は愚直であろうと思います! 異端者、裏切り者。私が消してあげましょう!」

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