記憶の収集

「そういえば、他の記憶も扱えるのか?」


 レアルの言う記憶とはこの指輪の事だろう。もし、他の記憶も扱えるのであれば可能性が広がる筈だ。場合によっては精霊を自力で撃退する事も出来るかも知れない。だが、問題がある。


「他の記憶の断片はどこにあるんだ」


 それそのものが無いのだからどうにもならない。探せばあるのかも知れないが、それが見つかるとも限らない。そもそも他にあるのだろうか。


「うーん。そうだねー。あった! こっちに来い」


 レアルは何か考えたそぶりを見せると、あったと言って自分の腕を掴み、この村にある建物で一番大きな家に連れ込んだ。中には弓と杖が置いてある、これが記憶の断片だろうか。


「この二つか」


「そうだよ。二つも記憶の断片が見つかるなんてラッキーじゃないか。早速試してみなよ」


 弓と杖に触れると。剣の時と同じように指輪に変形した。これらも同じように呼び出せそうだ。とりあえずは弓を呼び出してみるが。


「弓だけでは何も起こらないな」


「えー、ハズレかよ、つまんね。もう片方の杖はどうなんだ?」


 弓を指輪に戻し、今度は杖を呼び出す。この杖は〈ウインドロッド〉風の魔法使いが持っていた物のようだ。使い方も理解した。


魔法せんげん[ウインドブレード]」


 以前フロウが使っていた風の刃が発射された。フロウ程の威力は無さそうだが、十分脅威になりそうだ。だが、フロウは精霊に魔法は効かないといっていた。その上、扱えるのは風の魔法だ。存在そのものが風に近いフロウに効く訳が無い。


「へぇー、記憶を借りて魔法まで使えるんかー。だけど、魔法じゃあ精霊にダメージ与えられないもんなー。つまり、大ハズレー」


「他には無いのか」


「この場所には無いみたいだね。まぁ、精霊の1人位はアタイがパパッと殺してやるから安心しなよ」


「物騒な話だ。そんなに簡単に出来るものか」


 レアルはフロウに圧倒されていたようにしか見えず、そんな事言われても信用できる筈が無い。話半分に信じておこう。


「うわ、この顔全然信じてねぇ。仕方ないなぁー、次は本気出しちゃおうかなー」


「そういえば、エンシェントを倒すと言っていたが、どうすれば良いんだ」


 今思うと、エンシェントの力を削ぐものをもらったが、現状動ける精霊を対処しなくては意味が無い。そもそも、エンシェントの場所がわからない。


「エンシェントの所へ転移するって言いたいけど、今はアイツの守りが強すぎて転移できない。だから先ずは精霊を倒して力を削いだら、エンシェント本体の所に転移しよう」


「精霊はどうやって倒すつもりだ」


「だからー、アタイなら精霊の1人位簡単だってば、だから1人ずつ各個撃破していけば良いの」


 さて、レアルの話は聞かなかったことにしておいて。精霊を倒す方法を探さなくてはならないようだ。他には……。あのジダイガという男はどうだろうか。少なくともレアルよりは強そうだ。


「ジダイガはどうなんだ」


「あー、ジダイガは戦うの苦手だからね。しっかりとした準備しておけば戦えるかもしれないけど、流石に精霊1人1人倒すのに色々やるのは時間かかりすぎるっていうか。戦闘面ではジダイガを頼らない方が良いよ」


「そうなのか」


 何てことだ。状況は全然良いとは言えない。奇跡を信じて更なる記憶を探さなくてはいけないのか。今のところ有効なのは、境界を引いて精霊でも斬れる〈アンマグネクス〉だけだが、二回目は当てられないだろう。何か、動きを封じる方法があれば良いのだが。


「他の記憶も探したい。違う場所に移動させてくれ」

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