基本説明

「この世界は5人の管理者によって管理されていたんだ。それぞれ、中立、神聖、邪悪、秩序、混沌。コイツらが世界に影響しあってバランスを保ってきたんだ」


 お互い向かい合って椅子に座り。レアルにこの世界についての基本的な情報を教えてもらっている。何も解らないのではどうしようもない、大前提の部分を話してもらっているわけだ。


「そして、もう一つ。どんなに管理しても世界は徐々に老朽化してしまう。それを改善するために、〈世界転生システム〉というのがあって、老朽化した世界を滅ぼして新しい世界を作るというものだ」


 老朽化した世界を滅ぼして、新しい世界を作成。つまり、今この状態は老朽化した世界を滅ぼしているのか。もしかしたら、新しい世界を作成してる途中かもしれない。


「おっと、言っておくけど。いまこの状況は〈世界転生システム〉の起動した後だからな」


「この状態が完成形なのか?」


 記憶の無い自分にだって解るくらい、この可笑しい状態が正常に完成した後でも言うのか……いや、正常に完成できなかったのか。


「察したみたいだね。〈世界転生システム〉は正常に起動しなかったんだよ。正確には正常に起動したけど作成しきれなかった」


「何故」


 システムに不調があったのか、作成するためのピースが足りなかったのか、色々考えは浮かぶ。だが、どれもこれも確信できるものではない。疑っているのは根本部分であり、そもそも完成して無いものとして見ているからだ。


「それは、神聖の管理者が世界を滅ぼして、しかも〈世界転生システム〉の中枢を破壊したからだよ」


「管理者が?」


 今までの話を聞くと管理者は世界を守る存在だった筈だ。それなのに、何故。という疑問はあるがとりあえずそれは置いておくことにする。


「神聖の管理者は世界を滅ぼそうとした。だけど、想定外に〈世界転生システム〉が粘ってね。記憶の断片を寄せ集めて無理やり世界を構築したんだよ」


「そうか」


 世界を新たに作り直す事が出来なければ、神聖の管理者に破壊された世界の断片を繋ぎ会わせて無理やり世界にしたみたいなことか。そして、失ってしまった部分は空白というか、闇の部分という訳か。


「頭は悪くないみたいだね。大体解ってくれたみたいだ」


「その神聖の管理者を、他の管理者は止めなかったのか」


「止めたよ。だけど、みんな神聖の管理者に倒されたんだよね」


「レアルはどうなんだ」


 レアルは自分で言っていた。混沌の管理者だと。それが本当なら倒されてこの場所にいない筈だ。それでもここに居るという事は……


「おっと、それならね。管理者は〈世界転生システム〉の起動と共に生き返るようになってるんだよ。管理者が居ないままだと困るだろ?」


確かにその通りだ。管理者が倒されてそのままでは、その後の世界バランスが片寄ったままになってしまう。不完全というか、だた断片を寄せ集めただけとしても、世界転生システムが起動していることには変わりが無く。管理者は無事復活したということか。だが、それでも疑問は残る。


「だが、神聖の管理者は1人で他の4人を倒すことが出来るのか?」


 話を聞く限り、管理者はそれぞれ干渉し合ってバランスを保つ存在。だとすれば、パワーバランスが1人に偏るのはおかしいと言える。少なくとも、1人又は2人は神聖の管理者に加担していたのではないかと考えられる。


「正確には1人で全てやったわけではないと思う。神聖の管理者はそれとなく他人を誘導して、自分の有利になるようにしてたみたいだね。アタイだってなんでも解るわけじゃないよ。流石に殺されてから復活するまでの期間の記憶がある訳無いんだから」


 確かにそうか。レアルは混沌の管理者だといっていた。それが嘘で無ければ、神聖の管理者に倒されているのだから。いや、待てよ


「何で神聖の管理者が世界を滅ばしたって解るんだ」


「神聖の管理者が公言していたっていうのもあるけど、<世界転生システム>に干渉出来るのなんて管理者位のものだ。アタイが生きていた頃には既に邪悪の管理者が罠に嵌められて死んでたし、秩序は世界を滅ぼすなんて夢にも思わない。中立のあのダメ竜にはそんな度胸がある訳無いな」


 現状、レアルの話を信じる他無いのだが、どうにも信じきれないと思ってしまう何かがある。なんだろう、何かが腑に落ちない。


「そういえば、レアルは混沌の管理者なんだろ」


「まぁ、そうだ。疑ってるのか? それなら証拠を見せてやるよ」


 それだけ言うと、レアルは姿を消した。文字通り急に、唐突にレアルの姿が消えた。移動した痕跡も無ければ、そもそもレアルは椅子から立ち上がってすら居ない。


「ここに居るよ」


 後ろからレアルの声がする。振り向くとレアルが居た。人をからかうかのようにニヤニヤしている。そのままもとの位置まで戻ると椅子に座った。


「管理者は管理すると言う性質上。あらゆる場所に転移することが出来る。これは管理者にのみ許された権限だよ。もし、それすらも疑わしいんだったら、他の管理者に会った時にでも聞いてみたらいいさ」


 何となく納得は出来た。一応機会があれば聞いてみるつもりだが、とりあえずはそういうものとして理解はしておく。それはそうとして


「レアルは、何をしていたんだ」


「え、アタイかい?」

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