第17話 苦闘
ラッセの方へ跳躍した
――あいつは...もう人間ではないッ!!
そう自分に言い聞かせるラッセの脳裏に浮かぶのは間近で見たケロイド状の皮膚をした人間の顔だった。
ドォォォオオオオオオンッという轟音ともに爆散する100万円の
「よし、上出来だぜ。とどちゃん(藤堂)、唯ちゃん。」
どうやら、祐介が2人に投擲と爆破の指示をしたようだ。
「ジ――。こちらベネット。ポイントβにて狙撃の準備が整いました。いつでもイケます。」
その声を合図に、ラッセの考えをほぼ完全に理解していたアレックスとルイスそして、黒い丸いサングラスを着けた赤褐色の肌を持った男カルマが、
「ベネット奴の左脇腹に照準を合わせろ。」
千咲はターゲットから1000㍍以上離れた建物から
千咲は瞳に意識を集中させる。千咲の特異能力は優れた視力だけではなかった。彼女の最大の特異能力、それは目の前に広がる視界の情報を分析し、相手の動きを正確に把握、予測するというものだ。近接戦闘でも役に立つ能力だが千咲の運動能力ではそれを持て余してしまう。だから、
――私の
「―Fire!!!」
無線越しに聞こえるラッセの指示で、千咲の指に力が入った。音よりも速く、撃ち出さる大きな一発の弾丸。空気抵抗を最小限に速度を落とすことなく、対象へと近づいていく。すべての動きは千咲が予測した通りだった。精鋭3人に当たることなく、弱所へ―
バッ!!ブゥッゥゥウウウン!!!
弾は波動の膜の弱所、左脇腹へと直撃した。突然の衝撃に
「「うおぉぉぉらあぁぁぁぁあああああ!!!!」」
ラッセと藤堂の2人が、何とか表皮で銃弾を止めてることに集中していたであろう
宙を舞うそれに再び銃撃がなされる。先程までなら、すべての攻撃が無に帰していただろう。しかし、今は数発が波動の膜を貫通し肉体へと蓄積される。
大きな音をたてて地に落ちる
「唯、Capture!」
ラッセが無線を口に当てそう告げた。
12体全てのドローンの一部が展開する。バッと一瞬大きな音がした時には
――これだけの高電圧電流をくらえば、流石のお前でも動けんだろう...
「拘束用ワイヤーを打ちこみ完全に自由を奪え。その後、冷凍コンテナに入れる。まだ、戦闘は終わっていない。最後まで気を抜くなよ。」
そう言いながら大きなため息を吐く。ドローンによってゆっくりと冷凍コンテナの中に
「それでも私は美来くんを信じてるよ。」
千咲は皆よりも高い場所から、ボロボロになった演習場を俯瞰しながら呟いた。灰色の空から落ちる
~~~
「音が止みましたね...」
美来が俯きながら口を開く。
「ええ。」
麻里は静かに答える。
「何と戦えば、こんな音がするんですかね。」
その声には美来のやり場のない思いが感じられた。
「世の中には知るタイミングってものがあるのよ。美来くん、私たちは何も意地悪で情報の秘匿をしているわけじゃないのよ。残酷だと感じるかもしれないけれど、皆、最初は何も知らされることはないの。だから...ね?」
美来は俯いたまま、ほんの少しだけ頷こうとした。
これが光合成樹林第一管理研究所の探索、2日前の出来事であった。
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