第31話 我ら帰宅部 1

 これはある本に綴られた物語。

 フィクションという注意書きがされた。しかし、もしかしたら本当にあったかもしれない物語。

 



 よく晴れた青空の下、学校にチャイムの音が鳴り響く。

 先生が退室し、授業から解放された生徒達は思い思いにくつろぎ、教室は賑やかな雑談のざわめきに包まれていく。

 学校ならどこにでもあるありふれた光景。

 だが、その平和を享受できるのは、あくまでも学校のルールに従っている者のみだと気づいている者は何人いるだろう。


「部活に行こうよ」

「おーけー」


 生徒達は仲睦まじく部活に向かう。普通に暮らす分には退屈なほどに平和な場所。それが学校。

 だが、ルールから外れようとする者には容赦なく牙を剥く。それもまた学校の姿なのだ。

 多くの生徒達が部活に向かって、校内は打って変わったように静かになった。吹奏楽部が演奏を始め、校庭ではスポーツに励む運動部員達の活発な声が上がっていた。

 そんな喧騒から離れた放課後の廊下の階段下。人目を避けるように薄暗いその場所に、これからルールに反抗しようとする者達が集まっていた。




「ついに俺達の作戦を実行に移す時が来た」


 狼のような鋭い眼差しをした少年が言う。その隣でスポーツが得意な彼の友達はごくりと唾を呑み込んで頷いた。


「いよいよやるんだな」

「準備は整えてきたわ」


 クールな少女が普段の冷静な態度を全く崩さずに呟く。彼女は教室でもいつもこんな感じだ。


「頑張りましょう。おー」


 外国人の少女は握った拳を少し震わせながら言った。いつも能天気な彼女でもこれからやる事を思うとさすがに緊張しているようだ。

 彼らは帰宅部だ。

 狼のような眼差しをした少年の名は高志。その友達でスポーツが得意な少年の名は駿、クールで人を寄せ付けない雰囲気を持った少女の名は雪菜、普段は陽気で元気いっぱいな外国人の名はミアという。

 四人は前々から立てていたある計画を実行するために集まっていた。


「いよいよ俺達が帰る時が来た」


 声を潜めて静かに宣言する高志の言葉に、みんなはそれぞれに緊張の息を呑んで頷いた。

 この学校では部活は必ず入らなければならないという規則がある

 ほとんどの生徒達はめんどくさい入りたくないとぼやきながらも仕方なく入るのだが、それに反旗を翻す者達がいた。

 それが彼ら帰宅部だ。それぞれの目的のために帰ることを決行する。


「俺は帰ってアニメを見たいんだ」

「うちの猫が可愛くてよ。早く帰って世話をしてやりたいんだ」

「部活に縛られる人生なんて、私はご免だわ」

「自由に面白おかしく暮らしたいでーーーす」


 それぞれにそれぞれの目的を確認しあい、立ち上がる。そして、行動を開始した。

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