第12話 戦う決意
戦いが終わって城内に集まったみんなの周りには重い空気が立ち込めていた。
王様が代表するかのように長い溜息を吐いた。
「魔王にまんまとしてやられたな」
その思いはみんな同じだった。
「ロイヤルナイツでも全く歯が立たないとは」
いつもは爽やかなイケメンのデイビットもこの時ばかりは悔しさに手を震わせていた。
「神様から授かった大切な杖を奪われてしまうなんて」
レオーナも落胆して顔を伏せている。
「お役に立てず申し訳ありません」
セリネも申し訳なさそうに肩身を狭くしていた。
「僕が……魔王を止められなかったから!」
勇希は全ては自分の責任だと思ったのだが、誰も責めたりはしなかった。
王様は優しい瞳をして場の緊張を和らげるように穏やかに言った。
「だが、これは考えようによってはチャンスではないか? 魔王にはこのまま向こうの世界にいてもらえば、この国に被害が増えることはもう無いのじゃ」
「それはなりません!」
その意見はレオーナがきっぱりと却下した。いつにない娘の迫力に王様は驚いて目を瞬かせた。
レオーナは意思の強さを言葉に込めて言った。
「神様から授かった大切な杖を魔王に奪われたままにはしておけませんし、勇者様の世界に迷惑を掛けるわけにはいきません!」
「そうは言うがのう。勝算はあるのか?」
王様は困ったように白い髭をいじる。レオーナも困って迫力を収めてしまった。
「それは……」
「勝算ならあります」
そう言い切ったのはデイビットだった。
「あるのか!?」
王様を始め、みんなの視線が彼に向かう。デイビットは真剣な目をして頷いて話をした。
「前の戦いではマッドスパイダーの糸にまんまとしてやられました。しかし、要はこれさえ避けてしまえば戦いようはあったということです」
「あったのか?」
王様の質問にデイビットは頷く。
「はい、私の見た所マッドスパイダーは動きや技こそやっかいなれどパワーはそれほど無いようです。勇者様との戦いで決定的な一撃を出せなかったことからもそれは明らかでしょう。つまり私とセリネで奴を追い込み、そこを勇者様が仕留めれば」
「勝てるということか?」
「はい、後は当初の予定通り勇者様が魔王と戦えれば」
「僕が魔王と……」
勇希は考える。内心では驚いていた。デイビットがあのような状況でも勝てる手を考えていたことに。
勇希はただ真っ直ぐに自分の敵と戦う事しか考えていなかった。ならば自分も考えて勝てる手を見つけるべきではないだろうか。そう思った。
デイビットの知性的な瞳が見つめてくる。
「勇者様、魔王ともう一度戦っていただけますか?」
「もちろんです。でも、セリネは……」
彼女は前の戦いで随分と落ち込んでいるようだった。だが、彼女は目が合うと力強く頷いた。
「自分は挽回の機会が頂けるのなら戦いたいです!」
「勇者様に心配していただかなくても、彼女は強い子ですよ」
デイビットは優しく請け負った。みんなを甘く見ているのは勇希の方のようだった。
「みんな、戦ってくれるんだね!」
「もちろんです」
「我が国に腰抜けはおらんぞ」
「あの魔法陣の向こうがあちらの世界に繋がっているはずです。勇者様、行かれるならお気をつけて」
王様とレオーナに見送られて、勇希はゴッドジャスティスに乗って飛び立つ。
目の前にはエミレールが開けたままにしてある魔法陣から伸びる光の柱がある。その行きつく先には別の世界へ繋がるゲートがある。
勇希の元いた世界へ。
『いよいよ、覚悟を決めたんだな』
「うん、僕はエミレールと決着を付けるよ」
その手段はまだ見つかっていないが、必ず見つけられると信じて。
勇希は仲間達とともにそのゲートへ飛びこんでいった。
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