第10話 王国最強の騎士団 ロイヤルナイツ
王様とレオーナは城のバルコニーから戦いの様子を見守っていた。
戦場は遠いが邪魔する物はなく、戦いの様子は遠くからでもよく見えていた。
三人が魔王と接敵する。勇者が戦いを挑んだ。一対一の戦いに苦戦しているようだった。
「勇者様、どうかご無事で」
レオーナは召喚の杖を胸に抱きしめ、祈りを捧げる。
やがて魔王が大空高く飛びあがるのが見えた。何が起こったのかと目をこらすと真っ直ぐにこちらに向かってくるのが見えて、レオーナは気を動転させた。
「お父様、勇者様は失敗したのでしょうか?」
「落ち着きなさい、レオーナ」
驚いたことに父はこんな時でも冷静で、その瞳には絶対的な揺るがぬ自信を湛えていた。
「お父様、まさか何か策があるのですか?」
「この国にはね。最強のロイヤルナイツがいるのだよ!」
「ロイヤルナイツ!」
父の言葉通り、それはゆっくりと地下から姿を現し始めていた。
ロイヤルナイツ。
それは重厚な鎧をまとい、煌めく長い槍を掲げた重武装の騎士のロボット達だった。
横に並ぶだけで彼らは城壁のような圧倒的な堅牢さを見せつけ、何者も通さない意地と覚悟の鉄壁の布陣を築いていた。
その彼らに向かって魔王のデスヴレイズは全く減速せずに突っ込んでいく。ロイヤルナイツも全く憶することなく槍を振り上げる。
対決は一瞬。魔王と王国最強の騎士団が激突する。
「邪魔」
エミレールは全く興味を持っていないような冷めた声とともにデスヴレイズの剣を一閃する。ロイヤルナイツはそのたった一撃でボーリングのピンのように撥ね飛ばされ、町のあちこちに出鱈目に倒れていった。
煙が吹き上がる。ロイヤルナイツは一瞬のうちに全滅した。
だが、誰も彼らを責めることは出来ないだろう。しょせん神のロボットでも無い物が魔王の前に立ちはだかるのが間違いだったのだ。
王様はもう冷静ではいられなくなっていた。
「うごええええ! 我が国最強のロイヤルナイツごわええええ!」
「お父様、落ち着いてください!」
王様が泡を吹いて慌てふためいたことで逆にレオーナの方が冷静になってしまった。
「わしは夢を見ているのか!? なぜ我が国最強のロイヤルナイツがたった一撃でやられるのだああ!?」
「相手は魔王です! 勇者で無い者が戦いを挑むこと自体が間違いだったのです……」
悔しいがそれは認めるしかないことだった。召喚された勇者で無ければ魔王とは戦えない。
レオーナには落胆を続ける暇も無かった。王様が跳びあがって目を見開く。
「うわあ! 魔王来たー!」
黒い影が差す。レオーナは見上げる。
目をそらすことも出来ず、身をすくませるしか無かった。
魔王のロボット、デスヴレイズが王様とレオーナのいるバルコニーに取りつき、見下ろしていた。
「勇者様、早く……」
レオーナは天に祈りを捧げた。
ロイヤルナイツが全滅した報告をデイビットは動けないロボットの中で受けていた。
「こうも早く突破されるとは何という予想外。私は魔王の力を甘く見積もっていたのか。早くこの糸を……いや毒を何とかしないと!」
「デイビット様! 毒がコクピットの中にまで!」
「分かっている!」
セリネに言われるまでもなく状況は分かっている。
毒は止まることなく金属を溶かし続け、ついにコクピットの中にまで垂れるようになってきた。動けないロボットの中で逃げる場所など無い。
毒が鎧に掛かり、溶かす。
「まずい、このままでは」
「デイビット様、毒が服に掛かって……」
「分かっている。勇者よ、早くマッドスパイダーを倒してくれ」
デイビットは祈った。
勇希は早く決着を付けようと焦っていた。だが、マッドスパイダーは巧みに剣を避け続けていた。余裕が出来たのは相手の方だった。
「勇者よ、焦っているな。早く二人を助けたいのだろう」
「僕は早くお前を倒したいだけだ!」
マッドスパイダーは二人を救出する隙など与えない。勇希も戦うしかなかった。
「いいことを教えてやろう。マッドスパイダーの毒は人の命まで奪いはしない。支配する相手がいなくなってしまうからな」
「なぜそんな情報を僕に?」
「私との勝負に集中して欲しいからだよ。少しは良い勝負をしないと武勇伝には不足だからな!」
マッドスパイダーの蹴りを勇希は防ぐ。
『勇希、相手の話をうかつに信じるのは危険だ』
「分かっている」
勇希は真剣に相手に立ち向かう。ザメクは話を続けた。
「神のロボットであることが自慢のようだが、私のこのマッドスパイダーは先代の魔王様からいただいた物なのだ」
「そのロボットは先代の魔王が?」
「そうとも。これこそ私が先代の魔王様から信頼されている証。そして、エミレール様からの信頼も勝ち取る証となるのだ!」
マッドスパイダーのミサイルが発射される。今度は前よりも数が多い。バリアーを張ってもその威力を完全に消しきることは出来なかった。
「あのミサイル何とかならないの!?」
『あれほどの物はそう何発も撃てないはずだ』
ゴッドジャスティスの言う通り、マッドスパイダーはミサイルの乱発はしてこなかった。ジャンプしての飛び蹴りを勇希は避ける。
繰り出される腕の爪を剣で防いで下がる。
「逃げるのが上手い奴だ。だが、早くしないと仲間のロボットは二度と戦えなくなるぞ!」
「くっ」
『勇希、敵は誘っているのだ。誘いに乗っては駄目だ』
「分かっている。僕は冷静だよ!」
お互いに決め手の見つからないまま時が過ぎていく。
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