君と繋がる物語
幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕
さよなら、ありがとう
──ごめんな…
俺はお前にそれしか言えない。だってお前は──俺のせいで死んだんだから。
──ごめん、もっと生きたかったはずなのに、それを俺は、潰してしまった。だから…
「──だから、ゴメンって?」
「ッ!?」
「アイツが──
「…そうだよ……ッ!」
「……お前はいつまでそうやってアイツを縛るワケ?」
「しば、る…?」
俺は目の前の幼馴染みの言葉が理解出来なかった。
──しばる、シバル……縛る…ッ!?
幼馴染み──名前を
だからだろうか。藍はたまに俺の考えを見透かしたような、言葉を吐く。
俺の心を抉るように、俺の意思を確かめるように…。
「お前がそうやって自分を責めるから、優しい鴉音は成仏出来ないんだよ。お前はいつからそんなに偉くなったんだ?」
「…偉くなって、なんか……」
「じゃあ何で後悔してんだ? あの日逃げたこと、後悔してるんだろ?」
「…………うん…」
そう、アイツが──鴉音が死んだ日、俺は鴉音から最後の言葉を聞いていた。
なのに……
俺は逃げた。向き合うのが、怖くて。認めたくなくて。鴉音は俺のこと、どう思っただろう? もう、もうアイツの声が聞けないし、聞こえないなんて、認めたくない。
俺がアソコで手を離さなければ、俺がアソコで拒絶しなければ、そうしたら鴉音はまだ生きてたかも…しれなかったのに。
「……
「え……?」
「お前さ、気付いてなかったんだろ。自分が鴉音のこと好きだったって事にさ?」
「…ッ! 嘘……」
「嘘じゃあない。何でこの場面で嘘つかなきゃなんだよ、お前みてぇに頭湧いてる訳でもねーのにさ?」
「お、俺だって湧いてない!」
「うっそだぁー、俺に言われて気がついたクセに〜?」
「ぅ、ぐぐ…」
「まさにお前を見てた鴉音は“かくとだに えはやいぶきの さしも草 さじも知らじな 燃ゆる想いを”って感じだったぞ? 想ってる相手は一向に想いに気づいてくれない、超鈍感アホだった訳だしな」
「アホじゃねぇ! ……まぁ想いには気づいてなかったけど」
「やっぱりかよ…傍から見ててアレだぜ、すっげーもどかしいし、萌え死ねた」
「……サラッとオタク発言かますなよ…」
「オタクのどこが悪い(キリッ」
「(キリッ…じゃ、ねぇぇぇぇぇぇ!!!」
「痛ってッッッッッ!」
「知るか、この平安和歌オタク! 変態! 厨二病!」
「和歌のどこが悪い! 今の時代みたいに薄ら汚れた、みみっちい奴らより和歌に込めてる想いの方が何千万倍もすげぇんだよ!」
「真顔で和歌について語るな、耳にタコが出来るーっ!」
「耳にタコが出来るくれぇ耳元で語ってやるーッ! アイツの事でチマチマ悩む暇なんざ与えてやんねぇからな!」
「チマチマ、って…ッ!」
「事実だろ、クソ鈍感野郎ーッ!」
「痛ったぁぁぁぁぁ!?」
「ほら! 話聞くから詳しく聞かせろ。いつもの場所、行こうぜ?」
「…ッ! 分かっ、た……」
藍が珍しく笑いながら、優しく手を引いて歩き出した──…
君と繋がる物語 幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕 @Kokurei
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