第25話異形の者
歩き始めて数時間一行は不自然な箇所を見つけた。
「あれ、なんであの場所だけ砂が盛り上がっているのでしょうか?」
ソフィアが指差し疑問に思う。
皆が指差す方を見ると、なるほど確かに飛空艇を壁面としてそれに沿うように砂が一般的な人ほどの高さまで山のように積み重なっている。
「!」
「ギルボア様、あそこがガドランたちが開けた穴の箇所では?」
「あぁ、多分そうだろな。開けた穴に長いこと誰も近寄らなかったんで舞ってる砂が積もっていったってとこか…。よく見つけたなソフィア。よし、少し掘ってみるか!」
ギルボアはソフィアの肩をポンと軽くたたくと、皆に指示を出す。
それを聞き皆それぞれ、砂をかき出して行くと穴が開けられた跡が少しづつだが見え始める。
「よし、いいぞこの調子で続けていくぞ」
「タイチョーさーん。ばくはしてもいいー?」
「あー、いや爆破は無しだ。こいつ自体倒壊しかねん」
「ちぇー」
ノエルはにこやかに拗ねる。
みんなでせっせと砂を掻き出していると今度はレテがギルボアに話しかけた。
「ギルボア、レテに任せて?」
「あー、いや。…いや、まてよ。レテ、ここの砂だけを吹き飛ばせるか?」
「やってみる」
そういうとレテは腰を落とし息を深く吸う。その様子から皆がレテから距離を取り安全な位置まで後退していく。
すうううううううぅぅ
息を吸い込む音だけが辺りに響く。
そして…
「はっっっっ!!!」
勢いよく声を発すると同時に砂の山めがけ拳を突き出す。拳を高速で押し出したことによる風圧が砂山にぶつかり砂煙とともに風穴を作り出した。
「す、すごい音…」
ソフィアがとっさに耳を抑えていた手を下ろす。
「ひゃーあながあいてるー。ねぇねぇタイチョーさん!はやくいこうよー!」
ノエルは待ちきれないとばかりにギルボアを急かすが、彼はおもむろにバックの中をあさると松明を取り出した。
「まぁまぁそう慌てるなノエル。…レテよくやってくれた、ありがとよ」
彼はノエルを制しながらレテの頭を撫でる、レテは気持ちよさそうに目をほそめている。
「入る前に、中に空気があるか確かめねぇとな。本当は鳥か何かを入れて有毒ガスがないかどうかも確かめるんだが…。見た感じ木でできてやがるし、問題ないだろうよ」
松明を穴の中に放り込むと変わらず燃え続けたため、まぁすぐさまには問題ないだろうと彼は判断し皆に突入の合図をする。
「いいか。当たり前だが、気をつけながらいくぞ」
「はい、ギルボア様!」
5人が中に入ると、同時にパッと明るくなった。投げ込んだ松明の明かりだけではこんな輝度にはならない。あたりを見渡すと、松明が壁面に規則正しく横一列、ぐるっとその1フロアを囲むように並べられておりひとりでに火がついており揺らめいている。
「おかしいですね、私たちが穴を覗いた時には明かりは投げ込んだ松明だけのように見えましたが…」
アイリスが思案するも、ソフィアの言葉に遮られた。
「あ、あそこになにかいます!!」
前方に注目すると、先ほどまで確かになにもなかったところになにかがいる。
「なんだあれは…!」
なにかがその大きな躰を揺らしながらゆっくりと彼らの方へと向く。
浅黒い肌に、筋肉質な巨体。
手には巨体にも負けぬほど大きな斧
そして
牛の顔をした二足歩行の怪物。
手記の中でガドランは伝説の怪物になぞらえこう名付けた。
「ミノタウロス」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます