第24話白亜の船
「でけぇ…」
ギルボアは率直な感想をぽつりとこぼした。
砂舞う中、目に砂が入らぬよう手で防ぎながら近くまでたどり着くと、その大きさに彼らは圧倒される。
雲を突き刺すようにその飛空挺はそこらの山々より高くそびえ立ち、素材として使われている木のほとんどが白く変色しておりギルボアがそっと触れると静かに、ワインのコルク栓を上手く抜けずに真ん中で折れた時のようにポロポロと木片となって地面へと落ちていく。
「まずいなこりゃあ。下手に触れるとこの飛空艇ごと壊れるぞこりゃ」
木片を手に持ち、劣化具合を確かめながらギルボアは思案する。
「ギルボア様!手記のこのページによると、ガドラン隊はどこかに穴を開け突入したようです。…その穴は使えないでしょうか?」
ヒントはないかと手記を読んでいたアイリスがあるページを見つけ彼へと見せる。
「たしかに、そう書いてあるな。ぐるっと周りを回って探してみるか…。て言っても、この大きさじゃ結構時間かからそうだがな」
彼にそう伝えると突き刺さっている飛空挺に沿って歩き始めた。
「ねー、タイチョーさん。きのうからおもってたんだけどさー。そのあかいほんってなんなのー?」
ニコニコ顔のノエルがアイリス、ギルボア、ソフィアの間の会話で使われていた赤い本について尋ねる。相変わらず落ち着きがなく、辺りに落ちていたであろう石を何個かお手玉のようにしながら歩いている。
「ん?あぁこりゃあ、あれだ。ガドラン手記だよ。お前さん子どもの頃に読んだことくらいあるだろう?」
「レテ、それ、知らない」
ぽつりとレテが呟く。
「レテの部族には文字の文化がありませんから、仕方ないですよ」
そう言いながらアイリスは彼女の頭を撫でる。レテは気持ちよさそうにしている。
「あー、そうかレテは知らないか。…昔にな俺たちと同じように宝玉を探していた奴らがいたんだよ。この赤い本はなそいつらの隊長だったガドランってぇ奴が宝玉までの道のりを書き記した日記なのさ」
「あれー?てことはほかにもほうぎょくをねらってるやつらがいるってことー?」
ノエルはお手玉をやめ石をひとつ足の甲に乗せるとぽんぽんと蹴り上げはじめる。
「そうですね確かにみなさんその本を手にすれば宝探し気分で飛空艇を目指すでしょう。…でも私はそれはないと思います」
そういうとソフィアが装丁の真新しい本を取り出し、ノエルに渡す。
「これはガドランが書き記したものをまとめ、より簡潔にしたものになります」
ノエルはパラパラとページをめくりながら話を聞く。
「現在アイオラ国で流通しているのは全てその簡潔にまとめられた方ですが、原本となるこちら、ガドランの遺した日記とは所々内容が違う箇所や情報が作為的に削られているので読んだ方には単なるおとぎ話にしか思えないはずです」
一行が沿って歩き始めて数時間が経過したが穴はまだ、見つからない。
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