第21話恨み
「よーし、トリックスターノエルにおっまかせー!」
ノエルは一番にスケルトンたちに走っていくと、どこからか縦笛ほどの長さの棒を取り出した。
「それじゃ、第1問!これはなんでしょうかー?」
ノエルは無邪気にそう尋ねるが、言葉が通じる訳もなくスケルトンは持っている斧をノエルにむかって振り下ろした。
「あっぶないなー!もう!」
ノエルは身をよじり避けると
「じゃあ少し早いけど、正解はっぴょーう!」
そういうと棒についているボタンを押す。押した途端棒が2倍3倍に伸び先端に刃がついた棒となる。
そしてそのままスケルトンに突きつける。
「正解はー」
「槍でしたー!」
突き刺し、笑顔で正解を伝える。
が、しかし
「あれれー?」
槍は骨と骨の間を通り、ただ通過しただけであった。スケルトンは通り抜けた槍を確認すると再び斧を振り上げる。振り上げた瞬間スケルトンの側頭部に何かがあたり砕け散った。
「ノエル、勝手に死なないで。レテがノエル、殺す」
レテがスケルトンにハイキックを食らわし、ノエルをフォローする。
「いやー、ぼくとしたら、殺されずにレテと仲良く生きたいなーっておもうんだけどなー」
ノエルはニコニコしながらレテのフォローに感謝すると、相性の悪い槍を投げ捨てると愛用の短剣を取り出し腰軽く落とし胸の前で構えた。
「ダメ。ノエル、レテが殺す。決まり」
レテも腰を落とし拳を構えると、ノエルと背を合わせるようにしてスケルトンと対峙していく。
「とりあえずは、きゅうせんってやつだねー」
「それには、同意」
迫り来るスケルトンにステップを使い攻撃が当たらぬよう軽快に体を動かしながら戦っていく。
「ギルボアさん!」
ソフィアがギルボアを呼ぶ。彼女の手にはオリジナルのガドラン手記が開かれていた。
「な、なんだぁ!いま手が少し離せねーんだ!おい、アイリス!左から来てるぞ!」
「はい!見えています!」
アイリスは左から来ているスケルトンを斬る、というよりは鞘にいれたまま鈍器のようにし相手の骨を砕き戦っていた。
ソフィアは敵の矢による攻撃をなんとか避けながらギルボアの近くまでたどり着く。
「ギルボアさん!」
「どぅあ!!お前陰に隠れてるよう言ってただろう!」
真後ろから声をかけられ驚くがすぐさま矢による遠距離攻撃を行っているスケルトンたちをあらかた撃ち抜き彼女の方を向く。
「で、どうした?ここまで来るってこたぁなんかあるんだろう?」
「は、はい!あのガドラン手記によると、彼らもここでスケルトンの群れと戦っていました!それで、彼らはここから左の脇道にそれたところを行き逃げることができたようです!」
「本当か!?左ってーと……。あった、あの穴のことかぁー?よし、ありがとうなソフィア」
手を彼女の頭に乗せるとわしゃわしゃと撫でた。
「アイリス!左に移動しながら戦うぞ!そこの穴に行きぁ何とかなるらしい」
「わかりました!」
3人は少しずつ距離を詰めてくるスケルトンをいなしながら、左へと移動していく。左のほうで戦っていたノエルとレテにも声をかけると一気に穴の中へと走り込んだ。
穴の中は入り組んでおり、じめじめとしていたが道は途切れることなく奥へと続いていた。穴を抜けるとそこは綺麗な水辺が広がっており瓦礫も何もなく木々が生い茂っている。
「あー、つかれたー。あいつらなんだよー、ほねのくせにはりきっちゃってー」
ノエルが芝生の上に倒れこみながらぼやく、しかし笑顔は崩れない。
「骨のくせに、ノエルより強い」
「ひどなーレテはー」
「ここは…?どうしてこのようなところが…?」
「こりゃ…あれだな、飛空艇が山を挟んで出発した時より右側に見えてら。あの山が墜落の時の衝撃を吸収したんじゃねーかなぁ」
手記にはなにか書いてあるか?とギルボアはソフィアに尋ねる。彼女はページをめくると、素早く黙読し
「おっしゃる通り、昔のアイオラ国に調査隊も同じ結論です」
と伝える。
周囲に異形なものが現れる気配が感じ取れなかったため、今日はそこで野宿をすることにした。幸い長期保存の可能な食料を持ってきてはいたが水辺に食べられる魚がいたことから、ノエルが器用に釣り道具を作り上げ釣りを開始し、レテはそのまま水の中へと潜りすぐさま何匹か捕まえていた。アイリスとソフィアはリュックに元からあった年季の入っているテントを組みあげ、ギルボアはそれを見ながらソフィアから受け取ったガドラン手記を読み始めた。
日が暮れ、ノエルとレテで捕まえた魚を食べながら、ソフィアがギルボアに耳打ちする。
「出会った時から思っていたのですが、ノエルさんとレテさんって仲が悪いのですか?」
「んにゃ、そんなことはねーとは思うがな。でもなんだ、恨みってのはあるだろうな」
ギルボアは含み笑いをしながら、向こうで獲れた魚の数を競っているノエルとレテ、そしてその言い合いを治めようとするアイリスに目をやる。
「恨み、ですか?」
「あぁ、昔、こいつらと一緒に大陸中を旅していたことは伝えたよな?」
「えぇ、確かお二人とも10歳程度の時に出会ったとお聞きしました」
「そうそう、それでな、ある日。宿にみんなで止まったんだよ、その時出てきた飯が美味しくてな、みんな美味い美味い言いながらむしゃむしゃ夢中に食ってたよ。もちろんお前さんの父さんもな」
「ふふふ、お父様も」
ソフィアは父の意外な一面を覗けて嬉しく思った。幼い時の僅かな時間でしか知りえなかった厳格な父にそのような一面があるとは。
「でもな、レテだけはおかずにでてきた美味しい肉を一口食べると他の料理を食べ始めたんだ。みんな、『あぁ、口にあわなかったのか?」と思ってたよ。なんせまだその時はレテが仲間になってあんまり時間が経ってなかったからなぁ。お互いのことなんざこれっぽちもわかっちゃいなかった」
懐かしむようにギルボアは話し始める。
「でな、そんな他の料理ばかりを食べるレテに近寄る奴が居た…。ノエルだ。あいつはレテのそばにいつものようににっこにこ顔で近づいちゃこういったんだ。『あ、それいらないの?もらってあげるねー』ってな。」
「言ったそばからレテに返事もろくに聞かずにノエルのやろうは肉をさっと平らげちまってなぁ。レテはそれを見てしばらく固まってたんだが、次第に体をぷるぷる震えだしちまった」
ギルボアは笑いながら話す。
「そ、それでどうなったのですか!?」
話を聞くのに夢中になりソフィアは声を少し張り上げる。
「後で聞きゃあ、レテは別にその肉が嫌いなわけではなかったのさ。はははっ!ただたんにレテは美味しいものは最後に食べる派だったってことだ。それをノエルに喰われたんださぞかしご立腹だろうなぁ」
「え…。それじゃ、レテさんがノエルさんのことを襲おうとするのは…」
「なぁ、ソフィア…」
「食べ物の恨みって…こえぇえなぁ」
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