第20話瓦礫の思い出
門番たちを気絶させ、再び旧ナムザ帝国領へと足を踏み入れる。
「門番の方たちは大丈夫なのでしょうか…?」
ソフィアは振り返りながらアイリスとレテによって強制的に眠らされた門番たちを心配する。
「なーに、心配いらんさ、そのうちあいつらの仲間が見つて介抱するだろうよ」
ギルボアは、瓦礫を先に登り手を差し伸べソフィアが登るのを手助けしながらそう答える。彼女はその手を握りながら登り彼に礼を言うと
「それならいいのですが…」
とつぶやいた。
「そういえばさー、なんであいつらぼくたちのことつかまえようとしなかったんだろうねー?」
ノエルが先頭を歩きながら皆に尋ねる。彼は落ち着きがなく話している間も地面に丸をいくつか描きけんけんぱしている。
「それは…黒装束たちが王直属の暗殺部隊…だからではないでしょうか?彼らは将軍位の者たちしか存在を知られていませんし、それに殺そうとしている相手が前王の子、ソフィア様ならなおのこと。情報が下の門番まで行くとソフィア様を匿ってしまうかもしれません」
アイリスはノエルの遊びを眺めながらそう答えた。
「あーそうだろうなぁ。そのくせに、大通りであんなドンパチ始めやがって。…何がしたいんだあいつらは」
それにあいつら13年前もいたはずだ。ウィルを暗殺したのも現国王ザハマールの手引きで城内に入ったあいつらだったはず。とギルボアは13年前のあの日を思い出す。あの日はやけに暗く視界が悪く行動しづらかった。もう少し早くたどり着けば、もう少し、もう少し。あそこでああすれば、ここでこうすればと、この13年間ずっと頭の中でぐるぐると取り留めもなくめぐる。しかしいくら悔やんでもあの日に帰れるわけではない。今はこの子のために生きるのだ。ギルボアは
しばらく歩くと瓦礫と瓦礫の間の通路が現れる。前にソフィアが通った道だ。一行はその通路に入り歩き出し、数分ののち少し開けた場所に出た。
「ここは…」
ソフィアが辺りを見回し、思い出す。
そうだ、この場所でスケルトンに襲われたのだ!
瓦礫が不自然にカタカタと震えている。
「ギルボア、あれ」
レテは震えている箇所を指差しギルボアに知らせる。
「なんでしょう?」
「なんだろうねー、あれ、しろいかたまりがでてきたよー?」
瓦礫の隙間から白い棒状の塊が次々と飛び出し集まっていく。
「ありゃ…。…!?お前ら構えろ!くるぞ!」
「スケルトンだ!!」
ギルボアが叫ぶとソフィアは彼の後ろに隠れる、タイミングはほぼ同時だった。塊が集まりきると人型に形成される。
「あれが、ガドラン手記に出てくる…」
初めて見る異形の者にアイリスは息を飲む。
「お前ら気をつけろ…。人間と殺りあうときとはわけが違うからな」
いつの間にか、周囲をスケルトンに囲まれている。
ギルボアたちの宝玉を探す旅がいまここに始まったのだった。
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