第18話狼は地を駆け、頂高く吠え


2〜30人が人ごみを縫うように駆け抜けていく。


人々は小さなわき道などへ逃げ込んで行くので、どんどん後がつまり速度が停滞していた。



「ちっ、これ以上進めねぇ…。やるしかねぇか」

ギルボアはそう言うと背負っていたリュックをその場に置くと、残りのメンバーに戦闘準備を促す。


「門までは、あと300mほどかと」

アイリスが門の方を確認し、目測でそう伝える。


「よし、仕方ねぇあいつらが逃げ切るまでここで応戦するぞ、おれはこいつで援護する。お前達3人は前で暴れてくれ」


「承知しました。ギルボア様」


「はいはーい」


「レテ、やる」


3人は意気込み前へと駆けていく。


波の真ん中辺りから入り込んだはずなのだが、立ち止まったせいか人々の最後尾にギルボア達は位置していた。

いや、違う。

黒装束達は駆け抜けながら彼らの前方にいた人々を斬り、ボウガンで射抜き殺しながら移動していた。そのため、ギルボアたちと黒装束たちの間には死傷者しか存在しなかった。


「どうして…。どうしてこのようなことを。」

ソフィアは息を飲み、そして黒装束達をキッと睨んだ。


「あ、あなたたち!私が目的なら初めから私だけを狙えばいいじゃないですか!…それを…。民をいたぶるなんて!…許せません!」

ソフィアは怒りを覚え思いのままに叫んだ。


「ならば…。そうするまで!」

黒装束たちのうちの一人がボウガンで彼女に狙いをつけ放とうとする。

しかし、

パンっと火薬の炸裂音が響き、ボウガンを構えた黒装束が倒れる。


「俺の眼の前で殺させるかよ、バカが」

銃口から煙をだしながらギルボアは吐き捨てるように奴らに言い放った。


「ギ、ギルボアさん…」

ソフィアはギルボアを見つめ呟いた。




「おい、お前ら。この国の王女がこれ以上国民を失いたくないだとよ。…その命令、きいてやろうじゃねーか!なぁ!」

とギルボアは3人に問いかける。


「このトリックスターにまっかせなさーい!」


「承りました。この命に代えても、使命を果たしましょう!」


「ウィルの子。なら、私の仲間。仲間、大事。レテ、やる」



「みなさん…!」

ソフィアは父の愛した国で暮らしている国民を眼の前で失い、嘆き悲しみ訴えかけることしかできない彼女自身に無力さを感じるとともに、父の仲間達の力強さに頼もしさを覚える。


「老ぼれが…。…やれ」

隊長格の男が右手をギルボアの方へ向けると一斉に黒装束達が風のように素早く駈け出した。











アイリスは剣で相手の剣を受け止めつばぜり合いをし、押し返し、横から攻めてきた別の黒装束を避け、切り伏せる。また別の敵が彼女の背後をボウガンで狙っていたが、ギルボアにより撃ち倒された。


「ありがとうございます。ギルボア様!」

次の敵の攻めを避け、カウンターで斬り伏せ、感謝を述べる。


「礼なんていい!集中しろ!」

そういうとギルボアはノエルの前方にいた槍兵を撃ち抜く。






「いっくよー!それじゃ第1問!これはどう使うでしょうか?」

ノエルはそう言うとどこからかハンドガンのようなものを取り出し、目の前の3人の敵に見えるように右手に持ち、少し上に持ち上げた。


「貴様、銃使いか!距離をとって大きく動け!」

3人は大きくジャンプし後退すると、ランダムにステップをし、切り返しながら、銃口に狙われぬようにして攻め入るタイミングをうかがう。


「せいかいはっぴょーう!ざんねーんでした!正解はー」

口でドラムロールをして鳴らしながら銃を彼ら、ではなく彼らの近くの地面へと向けトリガーを引いた。


すると勢いよくワイヤーが射出され地面に突き刺さり、急速に巻き取ることでノエルが急加速で移動し、巻き取り終わると同時に勢いそのまま地を蹴り上昇した。

「正解は、ワイヤー射出器でしたー!」


「な、なんだその武器は!」

黒装束達は見たこともない、道具に足を一瞬足を止めるがすぐさま武器を構えようとする。だが残念ながら彼はその一瞬を見逃さなかった。


「今回の罰ゲームは、これだよー!」

そういうと投げナイフを雨のように投擲とうてきし、ナイフの雨に突き刺され3人とも倒れた。



「見ていたぞ…!近寄られれば、何もできまい!」

着地したノエルを背後から巨漢な男が剣で襲いかかる。


「うぉ!せっかちだなぁー。まだ次のの準備してないのにさ!」

ノエルはそれをナイフで受け止める。

受け止めたはいいが体格の差からか、徐々にノエルは押し負けてナイフごと剣で斬られそうになっていく。


「分が悪かったら退がれってね。タイチョーさんの教えだよー」

そう言うと、大きくバック宙しながらなにやら玉のようなものを投げつけた。


「それでは第2問!これはなんでしょうかー?」


「くっ…。跳ね返してやる!」

巨漢の黒装束は剣の腹ではねのけた。接触した途端玉が破裂し中から煙が大量に発生し男を包み込んだ。


「くそっ!煙玉か!前が見えん、ボウガン隊!おれの前方に向けて放て!」


「そうはさせないよー」

着地とともにノエルは左手に持ち替えた射出器を男の肩のあたりに打ち込み、ジャンプし巻き取る力を利用し遠心力で半円を描くように横から大きく回り込み滑空した。


それを少し離れたところで見ていたアイリスは目の前の2人を素早く流れるように斬り倒すと滑空しているノエルへと駆け出した。

それをみていたギルボアはアイリスの進む先にいた敵を撃ち倒していきルートを作る。


「アイリスねぇちゃんー!」

ノエルは右手を伸ばすと、アイリスは跳躍しその手を掴んだ。


「よろしく頼みますよ、ノエル!」

アイリスはそう言うとノエルに降り投げられ、巨漢の男の後方で待ち構えていたボウガン部隊の中へ飛んでくる矢を斬り、避け、黒装束の一人を斬りつけながら突入した。着地し水が流れるように踊るように斬り伏せボウガン部隊を全滅させると同時に、ノエルは肩に食い込んで痛みから叫んでいる巨漢の背中へ着陸し、ナイフで首筋を刺し倒した。



「よし、これであらかたこっちは終わったか…。レテはどうだ」

ギルボアはレテの居場所を確認する。


レテは南方のジャングルで生活をしている血気盛んな部族の出身で、一度戦闘が始まると大暴れをするため、ギルボアたちは余程のことがない限り昔から彼女を一人で自由に行動させていた。

彼女自身も協力して戦闘を行うことができないわけではないが、部族で習得した技のほとんどが1対複数を意識して創られており、味方を巻き込むことを気にして一人で戦闘をすることが多かった。



そんな彼女は現在、隊長格目掛け一直線にかけていく。



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