第13話監視の目
「ありがとうございます、ギルボア様!」
扉付近でやり取りを見ていたアイリスは笑顔で2人へと近づいていく。
「あぁ、まさかウィルの子が生きていたとはな」
ギルボアはソフィアをまじまじと見つめ、微笑む。
「あいつを護る事ができなかった…。…せめてその子どもくらいは俺の命尽きるまでは護ってみせるさ。今度こそな」
「ギルボアさん…!」
「ま、とはいってももう歳だからな無理はできねぇ。だから、少し助けを呼んだぞ」
「助けですか?」
ソフィアは首をかしげる。
「あぁ、昔の仲間に手紙を送ったのさ昨日。数日後には届いてこっちに来てくれるはずだ。…俺の事をまだ仲間と思っていてくれたらな」
ギルボアは自虐気味にソフィアに状況を伝える。
それを聞いていたアイリスはまったく問題ないといい
「大丈夫ですよ、ギルボア様。みんな今でもあなたのことを慕っているはずです!」
と励ます。
「だといいがなぁ」
「そうだ、ソフィア。昨日は邪険に扱ってすまなかったな。言い訳がましいが監視の目があったから仕方なかったんだ」
ギルボアは昨日の罵倒の件を思い出し、ソフィアに謝罪する。
「監視の目ですか?」
アイリスとソフィアは彼に続きを話してくれと促す。
「あぁ。10年前ぐらいか、お前さんの父さんが暗殺された後にな俺は護れなかったことに自分自身に失望と親友を失ったことに絶望してな、酒びたりになったんだ」
ギルボアは当時を振り返りながら話し始めた。
「お前たちも来たあの酒場さ。あそこに毎日いたよ。朝から晩まで、そうして2年ほどがたったある日。いつものように酒場に行くと店主が変わってやがった。変わったくせに『あぁギルボア今日も来たのか』なんて抜かしやがるからなんだこいつと思ったがすぐに監視だとわかった」
「なぜですか?ただ単に店主が変わって引き継ぎついでに常連客の特徴と名を教えて貰ったかもしれないじゃないですか」
ソフィアはそれだけで決めつけれないと反論する。
「確かにお前さんの言う通りだ、ソフィア。でもな奴の指先がキラキラ光っているのをその時見つけてな、それでこいつは普通の人間じゃねーって思ったのさ」
「キラキラ…。もしやルネイヤ光石ですか?」
アイリスがギルボアの話から推理してみる。
「その通り。ルネイヤ光石ってのは砥石の後に切れ味をより高めるため剣先に軽く擦りつける石のことなんだが、この光石は脆い石でな簡単に砕けるんだ。そんでもって砕けるとものすごーく細かくなっちまって手に付くと光によってキラキラと光るんだな。しかもなかなか落ちにくい。だからこの別人店主は剣を使う人間だと判断したのさ」
彼の説明になるほどとソフィアは頷く。しかし彼女の頭の中に疑問が浮かんだ。
「ところで、なぜ監視されなくてはいけないのですか?」
あぁとギルボアはその説明をし忘れていたことに気がついた。
「おれはその自分で言うのもなんだが結構な役職についていたんだ、その当時。だから表向きには病死とされていて、でも実際には暗殺されたウィル王のかたきを取るために新国王に対しクーデターを画策するかもしれないってんで、そのために監視をつけたんだろな」
ギルボアは推測だがなと付け加えた。
「しかしながらギルボア様に目がいっていたおかげでこちらが少し自由に動くことができました。ソフィア様を拠点を変えながら匿うことができましたから」
アイリスも木の椅子を近くから持ってきて三人で輪をつくるように座る。
「ははっ、それなら、いたるところで監視されていてよかったといえるか」
「それで昨日さ。あの時もしあの場でソフィアが生きていることがやつらにバレたら、すぐさま暗殺隊が向かっていただろう。あいつらからしたら前国王の子どもが生きていたら厄介だろうからな」
「そこです。ギルボア様」
「ん?」
ギルボアはアイリスの方を向く。
アイリスが続ける。
「私たちは時が来ればソフィア様を王女にすべく、画策してきましたが、ウィル前国王の子であっても何年も身の隠れしていた少女に国民はついていかないのです。そのため国民が納得する何か大きな『成果』が必要なのです」
「そのための資源問題解消策か!」
ギルボアは納得する。確かになにも実績がないものよりも大きな実績を残した少女の方にこそ求心力は高まるだろう。
「私は、ただ守るだけでなく。この国をお父様が見ていた視点から守りたいのです」
ソフィアは力強くそう宣言する。
ギルボアは素直にこの子は強い子だと思った。
「んん?ちょっと待て」
突如ギルボアは2人に静かにするよう促す。
「どうされました?」
小声でアイリスが尋ねる。
「監視のやつらに場所がばれたな、囲まれている」
「敵だ」
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