第10話純白の騎士 アイリス
翌日、いつもと変わらず大通りの脇道にある酒場、その酒場の端のテーブル席に男は居た。
男、ギルボアは変わらず酒瓶を左手に握りしめ、酒を味わうというよりは浴びるように飲みながら、赤色の本をめくり読んでいる。
「おいおい、ギルボア、朝からうちに来るなんてよどうしたんだい?いつもは昼頃に来るだろう?」
グラスを磨いていた酒場の店主はいつもと異なる時間帯に来たギルボアに対し疑問を感じていた。
「あぁ、そりゃな、今日は用事があるんだよ」
ギルボアは店主を見ずに本をめくりながらそう答える。
「用事?毎日うちで酒を飲むだけのお前が?」
店主はからかうように聞き返す。
「うるせぇな、おれにだって用事の1つや2つたまにゃできるんだよ」
彼はそう返すと、本を読むこと集中する。
店主はその様子を見ると彼はこう言う態度の時は何も喋らないと知っているため、再びグラスを磨くことに精を出すことにした。
昼頃になり、常連たちで賑わい始めた酒場に珍しい客が現れる。その者は純白の鎧、マントに身を包んだ美しい緑髪の女性であった。すらっとしたその女性は腰には剣を携えており、見目麗しく、その佇まいは凛と咲く花々を連想させた。
女性はくるりと辺りをゆっくり見渡すと、一直線に奥へと歩き始める。そして、彼女は酒瓶を持ちながら本を読んでいる男の前に立ち止まり、即座に膝をつき
「お久しぶりです。ギルボア様」
と、口を開く。
「おぅ、久々だな。今日辺り来ると思ってたぜ、アイリス」
ギルボアはそう畏るなと言いながら彼女を椅子に座るよう促す。
「よくお分かりになりましたね」
とアイリスは椅子に座りながら彼の予測に驚く。
「そりゃなぁ。昨日偶然お前の旗印を壁の外で見かけてよぉ、あーこりゃ来るなって思ったわけさ」
ギルボアは気さくに返答する。
「申し訳ございません。本当はもう少し早くにお会いしたかったのですが、遠征で南の賊どもの相手をしておりました…」
「いい、いい。ついに平均年齢を超えちまったこんな年寄りなんて後回しで構わんさ」
ギルボアは手をひらひら振り、自虐しながらくしゃっと年相応に刻まれたしわを作り朗らかに言う。
「で?今日来たのは、『あいつ』についてか?」
挨拶もそこそこにギルボアが本を閉じ、本題に入った。
「ええ、昨日1人で奮闘し、飛空挺に行こうとして色んなことを経験した様ですね。いまはショックを受けておられる様でした。」
「やっぱり、そうだったか。あの子どもは嬢ちゃんだったか」
「なぁ。アイリス…」
ギルボアは頷きながら納得し、そしてアイリスに尋ねる。
「あの嬢ちゃんのところへ連れて行ってくれないか?」
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