第4話

誰も踏み込んだことのないような森を

ひたすらに歩いた。


ここなら、誰にも邪魔されない。


ここなら、あの人を見つけれる。



根拠のない自信は俺の興奮を掻き立てていく。

転んでも痛くない、血が垂れていても気にならない。


狂おしいほどに愛してる。そんな言葉に親近感を湧かせてしまうくらい

の気持ちの昂り方だった。





「ここだ・・・」




大きな樹、なんの花か分からないけれど愛らしいたくさんのいろんな花。

ほどよく差し込む太陽の光。

もう夕日だったのでキラキラとはしていなくてどこか趣深い感じだった。


俺はあの青年のように樹に背を預けて座ってみた。








「あぁ・・このまま、このままずっとこうしていたい」




息を整えて空を見ると、もうすっかり夜になっていた。

早く帰らないと、家で勉強しないと

そうは思っていても傷が痛いと訴えかけてきて、とても動けそうにない。



「餓死だけはしたくないなぁ・・・」



「誰かいるの?」




誰かの声がして見渡すと、綺麗に手入れされた植物の向こう側から人が出てきた。



俺にとってこれが素晴らしい出会いになるとは、最初は思いもしなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る