第9話 9

・後輩ちゃんとバイト代


 後輩ちゃんがアルバイトを始めてから1ヶ月半が経ちました。

 翌日は待ちに待った給料日です。

「後輩ちゃん、初めてのお給料だね」

「はい、今から楽しみで楽しみで」

「もう使い道は決まってるの?」

「欲しいものがたくさんあって迷ってます」

「そっか。まぁ、使い過ぎには注意してね」

「はい!」


~数日後~


「あ、後輩ちゃん。久しぶり」

「先輩さん、おひさしぶりです」

「こないだのお給料で欲しいものはちゃんと買えた?」

 その言葉に後輩ちゃんは俯いてしまいました。

「ど、どうしたの?」

 先輩さんが心配して声をかけます。

「それが……ごにょごにょ……しました」

「え、なに?」

 聞き返しますが、何を言っているかよく聞き取れません。

「もしかして、ちゃんと振り込まれなかったとか?」

「いえ、振りこまれはしたんですけど」

「けど?」

「ほぼ使い切りました」

「ええっ、そんなに買い物したの?」

「いえ、したと言えばしたんですけど。ほとんど本代に消えました」

「え」

「だって、ここで働いてたら面白そうな本がたくさんあって!」

 必死に弁明しようとする後輩ちゃんの肩に、先輩さんが優しく手を乗せました。

「大丈夫だよ、後輩ちゃん」

「先輩さん」

「僕も同じような事したから。というか、現在進行形でしてるから!」

 書店員にはよくある事でした。

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本屋日誌 ~先輩さんと後輩ちゃんと~ 林檎亭みーすけ @apple-tea

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